今年4月、山口県阿武町が4630万円を誤って町民1人の口座に入金した問題。お金は町に戻って一件落着と思いきや、舞台は法廷へと移り、争われているようだ。
10月5日、町から誤って振り込まれた金をオンラインカジノの決済代行業者の口座に振り込んだなどとして、電子計算機使用詐欺罪に問われた田口翔被告(24)の初公判が山口地裁で開かれた。
検察側は、田口被告が、誤って振り込まれた金であることを銀行に知らせないなど、正当な権限がないなかでオンラインカジノの口座に振り込み依頼をしたことが虚偽情報にあたるなどと主張しているという。
田口被告は、
「(オンラインカジノへの)振り込み操作をしたのは私であり、間違いありません。大変申し訳ないことをしたと思っています」
と振り込んだ事実については認めた。
ただ、代理人の山田大介弁護士は、
「罪の成立については争います」
と無罪の主張を展開した。
田口被告をめぐっては、町が金の返還や弁護士費用などを求めた民事訴訟で、9月22日に和解が成立している。田口被告はツイッターで、
「阿武町の方々、大変ご迷惑をおかけしました。本当に申し訳ございません」
と反省の弁を語り、町役場に直接、謝罪に行きたいとの意思を示している。
刑事裁判で、田口被告が問われている電子計算機使用詐欺罪とは、コンピューターやスマートフォンなどで、電子システムに虚偽、不正な情報を与えて、財産権を侵害する、もしくは財産上不法に利益を得るというものだ。
山田弁護士が説明する。
「田口被告は、パスワードなど正規のものを入力しており、虚偽の情報を与えてはいない。不法な利益を得てもいません。道義的には問題がありますが、検察の公訴事実から見ると、無罪です。徹底的に争います」
そもそも、田口被告はなぜ、誤入金の4630万円をオンラインカジノに使おうと思ったのか。
山田弁護士によると、阿武町の誤入金が発覚した日、町の職員は最初に田口被告の勤務先の会社に行った。しかし、その日は田口被告は休みの日だったため、町職員は田口被告の自宅に行き、誤って振り込んだと言うと「すぐ銀行に行くから」と田口被告を車に乗せたという。