つまり、専門医でなくても、その科を標榜することができるのだ。一方で、患者を総合的に診る総合診療科については、まだ、標榜が認められていない。
「開業医といっても、専門性は違うし、すべてのクリニックが総合診療をおこなっているわけでもない。当然、感染症のことをよく知らない医師は院内で感染症が広がったときの風評被害が怖い、などの理由で患者さんを受け入れることに躊躇するのは、ある意味、仕方のないことでした」
一方、患者側にはこうした事情はわからないため、「開業医なのに、かかりつけ医のはずなのに、なぜコロナを診ないのか」となってしまったのだ。
現状では、患者は医師の本当の専門がよくわからないまま、標榜科の情報から、自分が疑う病気を診てくれる診療科を探さなければいけない。他の病気も含めて総合的に診てくれる「かかりつけ医」になってくれるかどうかを探すことはさらに難しい。つまり、患者にも病気の知識や、どこの科に行くべきかなどを考える努力が求められるわけだ。
それでも水野医師は、「かかりつけ医はもっておいたほうがいい。大きな病気が心配な場合はなおさらです」と言う。
その理由は、「医療の専門家から知識を提供してもらうことができる」から。
「最近は不調などがあると、まずはインターネットで病気のことを調べる人が多いですが、そのためか、『体重が短期間で急に減ったから、がんだと思います』というように、100%この病気だと思い込んで、来院する患者さんが少なくありません。でも、短期間でやせる原因にはメンタルの病気もあれば、バセドウ病など甲状腺の病気である場合もある。クリニックでの問診や検査で、ある程度は病気の予測がつきます。ここをとばして大きい病院に行っても、該当する科を探すのは難しく、そこで病気が見つからなければ、十分な説明がないまま、『特に問題はありませんね』で終わってしまう。しかし、不安は解消されないので、ドクターショッピングをすることになりかねません」