今秋のドラフトで、最も動向が注目されたのが高松商の浅野翔吾だった。
走攻守3拍子揃った選手で、今夏の甲子園で2打席連続を含む3アーチを放つなど、高校通算68本塁打とパンチ力もある。巨人は12球団の先頭を切る形で、浅野の1位指名を公表。その後は他球団が追随する形で、ドラフト前日までに9球団が1位指名の選手を公表した。12球団の単独指名も囁かれた中、競合で浅野の指名に踏み切ったのが阪神だった。
抽選となり、巨人・原辰徳監督と阪神・岡田彰布新監督がクジを引く。交渉権を獲得したのは原監督。目を見開いて力強くガッツポーズをすると、「浅野くんも胸を張って堂々とジャイアンツのユニホームをきて、我々は大手を広げて、迎え入れます。何も不安を持たず頑張って、ぜひジャイアンツに門を叩いてもらいたいと思います」と声を弾ませた。
アマチュア担当のスポーツ紙記者は、こう語る。
「高校生の中ではずばぬけています。巨人は選手層が厚いですが、2、3年以内に1軍のレギュラーをつかむ可能性も十分にある。スラッガーというよりは万能タイプです。鈴木誠也(カブス)、吉田正尚(オリックス)に近い。ミート能力が高く、首位打者争いの常連になるタイプ。守備、走塁も球界トップレベルの選手になる可能性を秘めている。心配なのはプロに入って環境が激変すること。来年2月の春季キャンプでは『浅野フィーバー』になるでしょう。一挙手一投足がマスコミに注目され、プロに入って全てが初めてのことなので慣れるまで戸惑うと思います」
巨人の高卒ドラ1は松井秀喜(現ヤンキースGM特別アドバイザー)、坂本勇人、岡本和真と球界を代表する選手たちがいるが、輝けなかった選手たちもいる。大田泰示(DeNA)は松井の背番号「55」を継承したが1軍に定着できず、トレード移籍した日本ハムで素質を開花させた。また、2005年のドラフト1位の辻内崇伸は大阪桐蔭の156キロ左腕として将来を嘱望されたが、プロ入り後はケガに泣かされて8年間の現役生活で1軍登板なしに終わっている。