Q がんゲノム医療とは何ですか? また、どこで受けられるのですか?

A  がんの原因となる遺伝子の異常を見つけ、それに応じた治療薬を用いる治療です

 がんの薬物療法(抗がん剤治療など)では、乳がん、胃がんなどがんが発生した臓器ごとに治療薬を決めるのが一般的です。しかし、同じ臓器のがんでも、個々の患者でがんの原因である遺伝子の異常が異なることがわかってきており、多数の遺伝子を調べ、その遺伝子の異常に合わせて治療薬を用いることが一部のがんでは可能になってきました。このような医療を「がんゲノム医療」といいます。

 がんゲノム医療の検査では、手術などでとったがんの組織を使って100以上の遺伝子を素早く一度に解析します。これを「がん遺伝子パネル検査」といいます。

 次に、その検査結果(遺伝子解析結果)を専門家が集まって検討します。この会議を「エキスパートパネル」といいます。そして、異常に適した治療薬があれば、治療につながります。

 ただし、がん遺伝子パネル検査は、誰でも保険診療で受けられるわけではありません。標準治療(現段階でできる最善の治療)がないがん、標準治療が終わった患者などの制限があります。また、検査で遺伝子の異常が明らかになっても、それに合った治療薬が存在しないこともあり、実際に治療につながる患者の割合は1~2割といわれています。

 がんゲノム医療を担う病院は国によって指定されており、「がんゲノム医療中核拠点病院」が全国に12カ所、「がんゲノム医療拠点病院」が全国に33カ所あります。拠点病院と連携した形で指定される「がんゲノム医療連携病院」は、全国に188カ所あります(2022年10月1日現在)。これらの病院は、すべて「がん診療連携拠点病院」でもあります。またがん診療連携拠点病院では、がんゲノム医療に関する相談にも応じています。

 検査を希望する場合、まず自分ががんゲノム医療の対象になるかどうかを担当医に確認しましょう。また、がんゲノム医療のことで知りたいことがある場合には、がん診療連携拠点病院の相談支援センターに相談してみましょう。

【前編も読む】>>その病院にかかっていなくても、がんの相談ができる窓口は?【今さら聞けないがんの疑問に答えます】

(文・山本七枝子)

高山 智子(たかやま・ともこ)

国立がん研究センターがん対策研究所がん情報提供部部長。国内最大のがんの情報サイト「がん情報サービス」の運営や全国のがん相談支援センターの教育研修に携わる。専門は、がんコミュニケーション学。「科学的エビデンスの不明な医療への社会的対応についての学際的研究」「患者・市民と医療者・専門家の協働に向けたヘルスコミュニケーションのモデル構築」などの研究にも携わる。

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