秋が深まり、本格的な冬が近づいてきました。何となく気持ちが乗らない、気分が晴れないという方も多いのではないでしょうか?「五月病」という言葉はよく知られていますが、実は秋から冬も心の健康に注意が必要な時期です。今回は、季節の変化に合わせて心のコンディションを整え、秋空のような晴れ晴れとした心で毎日を過ごすためのコツを、いりたに内科クリニック院長の入谷栄一先生にお聞きしました。本記事は、日本メディカルハーブ協会HPの記事を一部改変してお届けします。
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■日照時間が短くなると 心や体にも変化が
秋から冬にかけて何となく落ち込んだ気分になったり、気力が低下したりする人が増える傾向があります。その原因の一つと考えられるのが、日照時間の減少です。
これには、セロトニンが大きく関係しています。セロトニンは脳内で働く神経伝達物質の一つで、自律神経のバランスを整えて精神を安定させたり、気分を高揚させたりする働きをします。セロトニンは光が目の網膜を刺激することで分泌が盛んになるため、日照時間が短くなるとセロトニンが減少してしまい、脳の働きが低下して、落ち込みや倦怠感などの症状が現れやすくなるのです。
ちょっとした体調の変化は誰にでも起こり得ますが、症状がひどい場合は「冬季うつ」の可能性もあります。これは特定の季節だけうつ症状が現れる「季節性気分障害(季節性うつ)」の一種で、秋から冬にかけて症状が現れ、春になると自然に回復するのが特徴です。
冬季うつでは、落ち込みや意欲の低下、疲労感などの他、過食(特に甘い物など炭水化物を食べたくなる )、過眠 (睡眠時間が長くなる)といった、一般的なうつ症状とは反対の症状が出ることがあります。
日常生活に支障を来すほどの症状が続く場合は、無理せず早めに精神科や心療内科で相談しましょう。
■体内時計の乱れも メンタル不調の原因に
私たちの体には、睡眠・覚醒のリズムをコントロールする「体内時計」のシステムが備わっています。日照時間の短縮により、この体内時計が乱れやすくなることもメンタル不調の原因の一つです。
体内時計はメラトニンと呼ばれるホルモンによって調整されています。メラトニンは朝、日光を浴びることで分泌が抑制され、14~16時間後に再び分泌が始まり、体を眠りに導きます。そのため日照時間が短くなると分泌のタイミングがずれたり、分泌量が乱れたりして体内時計が狂い、結果、朝起きるのがつらくなったり、日中も眠気を感じたりすることが多くなるのです。
体内時計の乱れは自律神経の働きやホルモン分泌にも影響 し、疲労感や倦怠感、意欲や集中力の低下、落ち込みなども起こりやすくなります。
季節の変わり目は日照時間だけでなく気温、湿度、気圧なども変化し、心や体のバランスを崩しやすいもの。さらにストレスや生活習慣の乱れが加われば、症状はより重くなってしまいます。適切な備えで秋冬のシーズンを元気に乗り切りましょう。