■極度の恥ずかしがり屋
シリアスからコメディーまでさまざまな作品に出演し、独特の色気も兼ね備えた夏帆だが、共演者からの評価も高い。
前述の映画「Red」の公開記念舞台挨拶では、濃密なラブシーンを演じた妻夫木聡が夏帆について、「弱さを出せる人こそ強い人。包み隠さずに弱いところを見せ、目の前の役から逃げずに向き合える」と話し、「ステキだと思いました。覚悟を持った強い方」と称賛していた。
「夏帆さんは20代の頃から、その役をやるかやらないか自分自身で選んでいると以前インタビューで明かしていました。選ぶ基準は『その役を演じたいかどうか』という直感を大事にしているとのことでした。そうした自己基準があるからこそ、より役のキャラクターを自分のものにでき、視聴者は彼女の演技に違和感を覚えないのかもしれません」(同)
加えて、彼女の奥ゆかしい人柄も演技に深みを与えているかもしれない。民放ドラマ制作スタッフは言う。
「過去にインタビューで『極度の恥ずかしがり屋』だと告白していたことがあります。久しぶりに会った人には恥ずかしくて、ついぶっきらぼうになってしまうこともあるとか。芝居はセリフを言うため自分の言葉ではないので大丈夫だが、人前に出るのはいまだに慣れないそうです。こうしたシャイなところはある意味、奥ゆかしさやミステリアスなオーラを醸し出し、そこも女優としての魅力につながっているのではと思います。清純派から脱却しただけでなく、いまや視聴者が安心して物語に没頭できるほどの演技派になった。まさに、『この人が出るなら見てみよう』と思わせてくれる求心力を持つ女優のひとりでしょう」
芸能評論家の三杉武氏は、夏帆についてこう評する。
「夏帆さんというと、10代前半の頃のリハウスガールや、若手女優の登竜門的な作品である『ケータイ刑事 銭形シリーズ』の印象もあり、かつてはいわゆる清純派女優でした。一方で、ドラマ『みんな! エスパーだよ!』ではヤンキーの女子高生に扮したり、ジャニーズの人気グループ・NEWSの加藤シゲアキさんの小説が原作の映画『ピンクとグレー』や『RED』では濃密なラブシーンに挑戦するなど多彩な役を演じており、女優としてますます存在感を放っています。もともと演技力には定評がありましたが、今作でもその実力が見事に発揮されていると思います」
今作でも見る者を演技で引き込んでいく夏帆。作品に安定感をもたらす存在として、末永く重宝されそうだ。(丸山ひろし)