ベネッセグループ初の中学受験塾「進学館ルータス」を率いる吉田努氏に「中学受験の本質」を聞く連載の第3弾。関西中学受験界をリードしてきた吉田氏は、首都圏の第1志望合格は熾烈な戦いだからこそ、塾選びが肝心になると語る。かといって、すぐに塾をコロコロと変えるのは避けるべきだと指摘する。合格実績だけに惑わされない塾選びのポイントと転塾の副作用について聞いた。
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合格実績の高い塾にわが子を入れて、第1志望校合格に少しでも近づけたい。その思いから多くの保護者が、とりわけ大手塾が発表する合格者数の多さに目を留め、わが子もその1人ぐらいには入り込めるのではと希望を抱く。
だが、大規模塾は複数の校舎に数千人という塾生がいることを忘れてはならない。つまり、合格実績の載っている人数はそのごく一部なのだ。吉田氏はこう指摘する。
「単純な合格者数ではなく、塾の在籍人数に対してどのくらい合格者が出たかという『合格率』が本当の実績と考えるべきです。中学受験の第1志望校合格率は約30%といわれます。2桁、3桁の数の合格者の裏には、それよりはるかに多い不合格者がいるという事実があります」
とはいえ、この合格率は塾側も積極的に示さないことが多い。合格者数やブランド力だけで安易に選ぶのは早計といえるだろう。もちろん大手塾で、ぐんぐん伸びる子どももいる。ただ、わが子も同じ環境で同じ結果を出せるとは限らない。だからこそ、塾選びは大切なのだ。
「中学受験での保護者の最大の仕事は、塾がわが子に合うかどうかの見極めです」(同)
では、塾選びで大切なことは何か。
「ちょっとでも気になる塾は、必ず説明会に参加すべきです。塾の教育理念やシステムをしっかりと聞いて、責任者の考えに賛成できるか、わが子をイチから丁寧に指導してくれそうかを見極めることが重要です」(同)
吉田氏は受験の指導者であると同時に、息子の中学受験を経験した父親でもある。塾も含め、わが子の習い事先はすべて、必ず自分の目と耳で確かめて決めたという。