日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「脱マスクへの基準の見直し」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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先月、ようやくマスク着用をめぐる基準の見直しについての議論が始まったと思ったら、11月に入り、冬のコロナの流行がどうやら始まり、マスク着用の見直しは頓挫したかのような今日この頃。
日本においてマスクの着用義務はそもそもなく、あくまで、感染予防対策の一つとして「マスク着用のお願い」がなされてきましたが、依然としてお店に入るときにマスクの着用を「半ば強制」されることも多く、義務ではないものの、マスクをつけないといけない雰囲気を、私は日々感じています。
屋外をノーマスクで歩いていると「なんでマスクをしていないんだ。マスクをしなさい!」とお叱りを受けることが数回あったという個人的な経験からも、いつでもマスクを取り出せるようにポケットやカバンの中にマスクを忍ばせ、周囲の目線を以前に増して気にして歩くようになっています。
「本当はマスク、もう着けなくない……」「仕事柄、どうしてもマスクを着けざるを得ない」「周囲の目が気になるからマスクをしているけれど、いつまで着けないといけないのでしょうかね……」なんておっしゃる方に、外来でしばしば遭遇するようになってきました。
マスクの感染予防効果についてはこれまでにさまざまな調査が行われ、推奨されている新型コロナウイルスワクチン接種に加えて、屋内の公共環境においてマスクを着用することが、コロナ感染のリスクを低減することにつながることが多数報告されています。
一方、マスクの日常的な着用には負の側面があることも報告されてきているのです。
例えば、私たちの身体への影響です。アメリカのJennifer氏らは 、マスクを毎日長期間着用することによって、頭痛、息切れ、ふらつき、湿度の増加や呼吸困難感、にきび、顔の痒み、発疹、皮膚温度の上昇による不快感などが生じることを指摘しています。