マルチ商法で違法な勧誘などをした「日本アムウェイ」に10月、消費者庁が6カ月間の取引停止命令を下した。カルト宗教と同様に勧誘相手へのマインドコントロールや高額の商品契約などが問題となってきたマルチ商法。「金もうけの誘い」に乗せられての被害が後を絶たないが、専門家は「もうけ話はただのウソ」と断言し、警鐘を鳴らす。
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そもそもマルチ商法とは何か。
ある人が商品やサービスを購入して、その販売組織に入る。そして今度は勧誘役になり、知人や家族らを勧誘してそのサービスや商品を売り、「紹介料」などの形で利益を手にする。これが「もうけ」だ。そしてまた、知人や家族は新たな勧誘役として組織の一員となり、その知人や家族がさらに勧誘され……といった構図で、ピラミッド式に販売組織を拡大させていく商法である。
連鎖販売取引とも呼ばれ、特定商取引法で「目的を告げない勧誘」や「公衆の出入りのない場所での勧誘」「誇大広告」などが禁じられ、活動には制約がある。
だが、マルチ商法をめぐっては長年、高額の商品契約やマインドコントロールにより組織を抜け出せなくなるといった被害が続いてきた。
例えばある商品が素晴らしいものだと信じ込ませ、「無限に売れる」「誰にでもチャンスは均等にある」「あなたも努力次第で大金持ち」などと言葉巧みにもうけ話を持ち掛けて勧誘。法外な金額で商品を購入させ、組織に取り込む手口が目立つ。
「もうかるなどという話は、ほとんどの会員にとっては、ただの幻想でしかありません。被害にあわないためにも、その事実を知ってほしいと強く思います」
そう訴えるのは詐欺や悪質商法の被害に詳しく、日本脱カルト協会の代表理事も務める立正大学の西田公昭教授(社会心理学)だ。
なぜ、もうからないと断言できるのか。西田教授が第一に指摘するのは、「勧誘者の資質の問題」である。
「売り手が有名人などのインフルエンサー(世間に大きな影響を与える人物)なら、この人が大好きだから買いたいというファンがたくさんいるかもしれません。では、もうけ話に興味を持った人に聞きたい。あなたにはファンは何人いますか? ファンは増えますか? あなたはインフルエンサーになれるほどすごい存在ですか? と」