西田教授によると、マルチ商法の勧誘に乗ってしまうのは若い世代が多く、中でも社会に出たばかりの若者が目立つという。

「特に『Z世代』と呼ばれる若者たちは就職しても給与が低く、将来に不安を感じたり、『こんなはずじゃない、自分はもっとビッグになれるはずだ』という鬱積した思いを抱えている人が多くいます。そうした心理状態の若者には、大もうけできる、あなたにもチャンスがある、という話が魅力的に見えてしまいがち。マルチ商法はそんな若者の心理につけこんでいるのです」

 マルチ商法で大もうけしてピラミッドの上部にたどり着いた勧誘員も存在はする。だが、それは極めて確率の低い話で、大半は利用されて人生を台無しにする結果に終わると西田教授は話す。確かに、インフルエンサーになれる程の人物ならすでに違う人生を送っているはず。残念だが、それが現実だろう。

 さらに、たとえそのサービスや商品に魅力があったとしても、大もうけするほど売ることができるかは別の話だ。

「そんなに魅力的な商品なら、他の勧誘員たちもたくさん売りますよね。自分が勧誘した知人や家族が、今度は勧誘側に回ってどんどん周囲に売れば、自分が売る相手が減ってしまいます。『頑張り次第で無限に売れる』などという理屈のもうけ話はそもそも成立しない、そんな簡単にはいかないのです」

 世の人々がサービスや商品を購入する動機も、品質だけではない。好きなタレントがCMに出ていることや、そのブランドへの信頼感、価格の安さなどさまざまである。

「インフルエンサーでもないあなたが、商品の良さをいくら説いたところで、人気タレントやブランド、価格の魅力に勝てますか? 仮に1回や2回成功したとしても、その程度では儲かりません。マルチ商法のもうけ話が論理的に破綻していることを知っていれば、話を聞くことすらばかばかしくなるはずです」

 近年は、マッチングアプリで出会った相手に正体を隠して近づくケースが目立つ。相手が抱える悩みや不安に共感し、親身を装って徐々にマインドコントロールしていく。交際の期待を抱かせる「色恋仕掛け」も常とう手段だ。

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最後は「恐怖」を突き付けられる