米アポロ計画以来、半世紀ぶりに人類は月を目指す。日本も参加する「アルテミス計画」の第1弾として11月16日、米航空宇宙局(NASA)はフロリダ州のケネディ宇宙センターから新型ロケット「SLS」で宇宙船「オリオン」を打ち上げた。今回の無人飛行試験を経て、月面の南極付近に着陸し、氷が含まれる地質などを調査する予定だ。この氷から水が得られれば、将来、地球の南極基地と同様に月面での長期滞在が可能になるかもしれない。その課題に取り組んでいるのが住宅メーカーのミサワホームだ。
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今、ミサワホームが未来志向の住宅や月面有人拠点などへの応用を目指して開発した「南極移動基地ユニット」が、南極内陸部の「ドームふじ観測拠点II」に向けて移送中だ。来年1月からは、極限環境下での持続可能な住宅システムの構築を目的とした実証実験を行う。
「昭和基地から1000キロ、平均気温マイナス50度、(標高が高くて)空気が地表の3分の2しかないところです」
ミサワホームの秋元茂担当部長は、そう説明する。
極限の地で試せないか
このプロジェクトは宇宙航空研究開発機構(JAXA)と国立極地研究所(極地研)、ミサワホーム、ミサワホーム総合研究所の連携によるもので、2019年にスタートした。
きっかけは15年4月、JAXAが火星探査や月面基地建設など、宇宙探査についての研究の展開や定着を目指す組織「宇宙探査イノベーションハブ」を立ち上げ、さまざまな分野から人材や知識を求めたことだった。これに対してミサワホームは「持続可能な住宅システムの構築」を提案し、採択された。
この提案について、秋元さんは「宇宙での生活を考慮し、メンテナンスがしやすかったり、センサーで宇宙飛行士の居住空間を見守ったり、容易に増築や減築ができたりする建物です」と、説明する。
17年からJAXAとの共同研究を始めた秋元さんはある日、気がついた。