暗号資産の交換業大手「FTXトレーディング」の経営破たんをめぐり、米の投資家が「広告宣伝にかかわった著名人にも責任がある」として米大リーグの大谷翔平選手らに対し損害賠償を求める訴えを起こした。大谷選手は同社の日本法人のCMにも出演していたが、日本でも損害が生じた場合、広告塔に起用された著名人の責任が問われる可能性はあるのだろうか。過去の裁判例をもとに、専門家に聞いた。
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あの大谷選手が訴訟沙汰になるとは、誰も想像しなかっただろう。
米投資家らが提訴したのはFTXのサム・バンクマン・フリード前最高経営責任者(CEO)のほか、大谷選手や女子テニスの大坂なおみ選手ら「広告塔」に起用された著名人たち。110億ドル(約1兆5400億円)の損害を被ったと主張している。大谷選手はFTXとの長期パートナーシップ契約を結び、「グローバルアンバサダー」に就任していた。
大谷選手は、同社の日本法人のテレビCMにも出演していた。映像では、男性2人が暗号資産について語る中、同社の広告看板にある大谷の写真がウインクをし、あとは投球のシーンが流れるだけでセリフはない。
米での提訴の行方は分からないが、日本でも投資などで損害が出た場合、CMなどに起用された「広告塔」が賠償責任を負う可能性はあるのか。
弁護士法人クローバーの村松由紀子弁護士によると、損害賠償請求ができるのは主に「契約違反により損害が生じた場合」と「契約関係はないが、故意や過失による不法行為によって損害が生じた場合」だという。
CM出演者へのケースでは、「出演している著名人と損害を受けた当事者に契約関係はない、ということが原則になっています。そのため、(原告は)故意や過失による不法行為によって損害を受けたとして賠償請求をすることになります」という。
ただ、企業側の違法行為が認定されたとしても、ただちに出演者に賠償責任が生じることはない。
「その損害について、出演者の故意や過失(予見可能性)があったのかが特に争点となります」(村松弁護士)