また、「女子力の磨き方がわからない」「女子力がなくて困っている」という悩みに対しては「女子力なんてウソの概念」と切り捨てた。料理ができるとか気が利くというのはそれぞれ個別の能力に過ぎず、「女子力」などというものは存在しない。「そんなあやふやなものにとらわれずに個性を磨くのが大事」と主張した。

 このように、どんな悩みに対しても俯瞰したような立場から冷静に鋭い意見を言ったことで、コメンテーターとしての能力が認められ、その分野の仕事が一気に増えていった。

 情報番組のコメンテーターというのは、タレントにとっては簡単そうで難しい仕事である。無難なことを言っても印象に残らないが、的外れで過激なことを言えば叩かれる。芸人だからといって真面目なニュースにふざけたコメントをすれば白い目で見られる。

 細い隙間を縫うようにして、ありふれてはいないが説得力のある短くて鋭いコメントを瞬時にひねり出さなければいけない。カズレーザーは高いレベルでこれをやり続けられる数少ない人材の1人である。

 高学歴だったり、毒舌を売りにしていたりするタレントや文化人はほかにもたくさんいる。だが、カズレーザーほどコメンテーターとしてきちんと評価されている人はほとんどいない。

 金髪で全身真っ赤の服という異様な外見の彼は、その見た目のイメージ通り、他人の目を気にせずに短い言葉で周囲がヒヤッとするようなことを口にすることもある。しかし、知性とユーモアを駆使して聞き手に嫌な印象を与えない。彼が求められる理由はそこにある。

 カズレーザーの言動からは人間臭い感情の起伏がほとんど感じられない。他人に嫉妬したり、自分がどう思われるかを気にしたりすることなく、好きなことだけをやってのびのびと生きているように見える。

 日本人の中には、他人にどう見られるかを常に気にしているような人が多い。誰もが世間体を過剰に意識してしまうお国柄だからこそ、マイペースを貫いている彼の生き方は魅力的に映る。カズレーザーは達観した態度で息苦しい日本社会に風穴を開けているのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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