来年のドラフト候補として注目される広陵・真鍋慧
来年のドラフト候補として注目される広陵・真鍋慧
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 高校の部は大阪桐蔭の連覇、大学の部は明治大の7度目の優勝で幕を閉じた明治神宮大会。2023年のドラフトに向けて最初の大きな大会となったが、プロのスカウト陣にアピールした選手をピックアップして紹介したいと思う。

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 まず高校生の投手では前田悠伍(大阪桐蔭)が頭一つリードしている印象だ。準決勝の仙台育英戦では10四死球を与えるなど大会を通じての調子は決して良いとは言えなかったが、それでも決勝戦ではリリーフで4回を無失点、7奪三振とさすがの投球を見せてチームを連覇に導いた。チェンジアップ、ツーシーム、スプリットと3種類の落ちるボールを操り、勝負どころでは140キロを超えるストレートで押すこともできる。昨年秋から常に結果を出し続けているのは見事という他ない。春はどこまでストレートの凄みが出てくるかに注目だ。

 前田以外の投手では高橋煌稀、仁田陽翔(いずれも仙台育英)、宮国凌空(東邦)、南恒誠(大阪桐蔭)、寿賀弘都(英明)、東恩納蒼(沖縄尚学)などの名前が挙がるが、いずれも現時点では万全のドラフト候補という印象は感じられなかった。高校からプロ入りを目指すのであれば、この冬の期間にスケールアップが必要だろう。

 野手で強烈なアピールを見せたのが真鍋慧(広陵・一塁手)だ。昨年も1年生ながら準決勝の花巻東戦でホームランを放って注目を集めたが、今大会も厳しいマークの中で2本のホームランを放ち、その長打力を存分に発揮した。内角のボールに詰まらされるシーンも目立ったが、とらえた時の打球の勢いと飛距離は圧倒的なものがあり、2本のホームランはいずれも打った瞬間に分かるものだった。決勝でも前田の外の変化球を鋭くセンター前に弾き返し、対応力も見せている。来年の高校球界を代表する打者の1人になることは間違いないだろう。

 真鍋以外の野手では山田脩也(仙台育英・遊撃手)、小川大地(大阪桐蔭・遊撃手)、田上夏衣(広陵・外野手)、寿賀弘都(英明・外野手兼投手)、知花慎之助(沖縄尚学・外野手)などの名前が挙がる。投手と同様に大学を経由してプロを狙うというタイプの選手が多かったように見えたが、夏からの成長を見せたのは山田だ。フットワーク、スローイングとも高校生ではトップクラスで、プレーのスピード感も申し分ない。打撃(右打ち)は2番ということもあってか少しセンターから右へ打とうという意識が強すぎるように見えたが、リストワークでも目立つ存在だ。貴重なショートの好素材として今後も注目したい選手である。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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