■劇場版グッズを転売目的で購入
前出の広瀬氏は状況をこう話す。
「Weiboや動画配信サイトではすぐ削除されているようですが、イタチゴッコとなっており、次々にアップロードされています。見た感じ、在日中国人が館内で盗撮した映像のようです。また、活発化しているのは劇場版のグッズの転売。EC機能を備えたSNS『小紅書』には多くの劇場グッズが出品され、活発にやりとりされていました。中には1時間並んで10万円分のグッズを購入し、ファンに向けて転売しているアカウントもありました」
こうしたアカウントの中には、映画館内の劇場内グッズショップの商品棚の映像を無断で撮影して投稿し、購入希望者を募る「無在庫販売」のアカウントもあった。いずれも価格を問い合わせるユーザーのコメントが多くつけられており、中国本土からの引き合いが多いようだ。
ここまで「スラムダンク」の関心度が高い理由について、ジャーナリストの周来友氏はこう述べる。
「中国でバスケットボールは国民的スポーツで、日本における野球のようなメジャーな存在です。『スラムダンク』が中国ではやった頃は、ちょうど中国人として初めてNBAに行ったワン・ジジー選手や、身長229cmで有名なヤオ・ミン選手の活躍があり、盛り上がった時期でもあります。後に正規版も発売されましたが、90年代末はみんな海賊版で見たり、読んだりしていました。コロナ禍以前は、聖地巡礼で鎌倉高校前の踏切に行ったり、江ノ電に乗る中国人観光客がたくさんいたことも有名です。いまや、中国の国民的アニメと言っても過言ではないのです」
劇場版は中国でも公式に上映される予定だが、それを待てない中国のファンたちのフィーバーはしばらく続きそうだ。(山重慶子)