今井氏は、今回の発表の直前までSNSに、今年春の統一地方選に立憲民主党から出馬を、というチラシを持った写真をアップしていた。岡田克也幹事長とのツーショット写真もある。

 だが、裏では政界の泥沼にのみ込まれようとしていた。

 今井氏と立憲民主党に溝ができるようになったのは、衆参両院の元議員で立憲民主党の岐阜県連常任顧問を務めていた山下八洲夫氏が、昨年5月、詐欺容疑で逮捕されたころからとみられている。現職の国会議員の名前をかたり、期限切れのパスを示して新幹線のグリーン券をだまし取ったという事件=同罪で起訴後、執行猶予付きの有罪判決=だ。

「今井氏は山下氏のことを『あのじじいは、なんてことするんだ!』とののしり、これまでになかった激しい攻撃性を見せるようになった。そのころから、県連の会議では遅刻の常習犯。今井さんのために開始を30分遅らせるようにしたが、それでも会議のぎりぎりにしかこない」(前出・岐阜県連幹部)

 今井氏の不満を見透かしたように割って入ったのが、自民党だった。

 古屋氏の後援会幹部がこう語る。

「当選11回の古屋氏は、次回の衆院選は出馬せずに引退し、親族が出馬するというのがもっぱらの話です。ただ、今井氏という強敵が現れて世襲で勝てるのかと危ぶむ声もあがっていました」

 岐阜5区は、人口10万人を超える多治見市が中心で、今年春には市長選がある。今期限りで退任する現職市長の後継を巡り、県議や市議ら3人がすでに出馬表明している。そのうち県議2人はいずれも多治見市の選挙区のため、県議の枠が二つ空くことになる。

 自民党の岐阜県選出の国会議員が、今回の舞台裏を打ち明ける。

「岐阜は保守王国と呼ばれ、国政は自民党がすべて勝利するのが当然という土地柄。今井氏の若さ、人気でこのままではいずれ岐阜5区は立憲民主党にとられかねないという危機感があった。それなら、立憲民主党に不満がある今井氏をこちらに引き込めば、となり、古屋氏や野田氏はじめ、県連幹部が今井氏に接触した。多治見市長選では、県議を辞めて出馬する一人に自民党が推薦を出すことも決めている。実質、その後継として今井氏が自民党推薦で出馬すれば、『当選は間違いない』と誘ったということだ。今井氏もそれに応じてくれた」

2021年の衆院選で支持者に向かって、街頭演説をする今井瑠々氏
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「立憲からの活動費を受けながら自民と通じていた」