
心筋梗塞(こうそく)や狭心症の治療としておこなわれるPCI(経皮的冠動脈形成術)は、心カテーテル治療で最も代表的なものの一つです。
心カテーテル治療は、手首や腕、足の付け根の血管から、カテーテルと呼ばれる細くて柔らかい管を挿入して心臓まで到達させ、さまざまな処置をおこなう治療方法です。外科手術に比べ、入院期間も1~2泊程度と短くて済み、痛みもほとんどないためからだへの負担が少なく、社会生活にも比較的早く復帰できるというメリットがあります。本記事は、 2023年2月27日発売の『手術数でわかる いい病院2023』で取材した医師の協力のもと作成し、お届けします。
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■狭心症や心筋梗塞のカテーテル治療、PCI
心臓には大動脈から分かれた冠動脈という血管があり、3本に分岐して心臓に酸素と栄養を運んでいます。高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満、運動不足、加齢などにより動脈硬化が進んで血管が硬くなると、途中で狭くなったり(狭窄、きょうさく)詰まったりして血流が悪くなり、虚血性心疾患と呼ばれる心筋梗塞や狭心症を引き起こします。
心筋梗塞は血管が完全に詰まってしまった状態で、その部分から先に酸素や栄養が行かず、心臓の筋肉が壊死(えし)してしまいます。早急な治療が必要で、治療が遅れると命の危険があります。一方、狭心症では血管が狭くなっているものの、血流は保たれています。胸の苦しさや痛みなどの症状を感じる人もいますが、何も症状がなく人間ドックなどのCT検査で指摘される場合もあります。
PCIは、この血管の詰まったところに、ステントと呼ばれる網状の金属の筒やバルーン(風船)を挿入し、中で広げて詰まりを解消する治療方法です。
■狭心症の治療方法
狭心症の治療方法には、薬物治療、冠動脈バイパス手術、PCIの三つがあります。基本的にはまず薬物治療がおこなわれ、血液サラサラの薬と言われる抗血小板薬やコレステロールを下げる薬を中心に、症状などに応じて処方されます。
さらに治療が必要な場合には、PCIと冠動脈バイパス手術という二つの選択肢があります。バイパス手術は、胸や腕などからだの他の部分から取ってきた血管を使い、冠動脈と詰まった部分の先の血管とをつないでバイパスを作る外科手術です。2週間ほどの入院やリハビリが必要で、切った部分の痛みもあり、仕事などへの復帰には少し時間がかかります。