「昨日3時間お付き合いいただいた方も、ゲストのマツコ・デラックスさんだけ見てチャンネルを変えた方も、ご視聴いただき、ありがとうございました」
「昨日は入社2年目の山本アナがバタバタして、大変失礼しました」
大変厳しい言い方をすれば、これらに共通するのは「低姿勢なようで尊大」「卑屈なようで傲慢」というひねくれた精神性である。「最初だから出来が悪くても許してね」「批判的な意見が来ているのもわかってるけどすぐには対応できないから少し待ってね」といった「甘え」の意識が感じられるのだ。
もちろん番組側としては、視聴者に対してわざとそういう甘えたところを見せてしまうという「ノリ」をやっているわけなのだが、このノリは一種の「王様しぐさ」である。フジテレビはバラエティの王様として一時代を築いた歴史があるからこそ、勢いが衰えた今もその感じを捨てられずにいるのではないか。
かつてのフジテレビは「お祭り騒ぎ」が得意な局だった。過去のレジェンド番組である『オレたちひょうきん族』や『笑っていいとも!』や『めちゃ×2イケてるッ!』は、テレビの中で起こっている祭りの熱狂に視聴者を巻き込むことで人気を博していた。テレビが娯楽の王様だったからこそ、そこに人々は魅了されていた。
しかし、そのような番組作りは今の時代には通用しない。人々の心がテレビから離れている中で、表面上だけ取り繕って視聴者に甘えても、それだけで見る人との距離を縮めることはできない。
「王様」が「裸」であることはすぐにバレてしまう。フジテレビという王様の裸を見ても、視聴者はわざわざ親切にクレームを入れたりはしない。ただ黙ってテレビを消すか、チャンネルを変えるだけだ。
ここまで後ろ向きな書き方をしてきたが、この番組のコンセプト自体は悪くはないし、個人的には期待もしている。最後まで何がしたいのかよくわからなかった『ポップUP!』に比べると、新しいことをしようという意欲は感じられる。