子どもは大人を小さくしただけの「ミニチュア」ではなく、臓器や身体機能、精神、全てにおいて発達途上にある独特の存在です。まずは子どもの体と心の特徴を知って、毎日のケアに役立てていきましょう。前編では、子どもの健康を守る上で知っておきたい「子ども」と「大人」の違いを、いりたに内科クリニック院長の入谷栄一先生に聞きました。後編では子どもが病気にかかった際の具体的な注意点を紹介します。本記事は、日本メディカルハーブ協会HPの記事を一部改変してお届けします。
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「子どもは小さな大人ではない」
これは18世紀の哲学者ルソーの教育論の中の言葉です。ルソーは子どもを大人とは全く違う生き物であり、子どもには子ども固有の世界観があると考えました。こうした考え方はその後の児童教育に大きな影響を与え、教育分野だけでなく現代の小児医療にも受け継がれています。私たちはともすれば子どもは大人の縮小版と考えがちです。子ども時代という固有の世界を正しく理解して成長過程に合わせた適切なケアをしていきましょう。
■子どもの体と心は発達途上 ステージに応じたケアが大切
大人とは違う子どもの最大の特徴は、臓器、体の機能、精神、全てにおいて発達途上であり、未完成の状態であることです。大人と子どもとは体の仕組みも、罹患する病気の種類も、治療法も違います。
こうした違いを確認できるのが、子どもの成長と発達の過程です。ちなみに医療の分野では、「成長」は臓器や身体全体が大きくなることをいい、「発達」は臓器や身体の機能を向上させることをいいます。
人は生まれてから「新生児」「乳児」「幼児」「学童」と次々と名前を変えて呼ばれます。なぜなら、心身共に変化をしていく子どもに対しては、それぞれのステージに応じた向き合い方が必要だからです。
子どもの健康を守る上で、大人は自分の体を基準にすると判断を誤ることがあります。そのため保護者や子どものケアに携わる人は、子どもの体の特徴をよく理解しておくことが大切です。
<子どもの発育期の分類>
新生児期: 出生後4週間まで
乳児期: 満1歳まで
幼児期: 満1歳から小学校入学まで(1~6歳)
学童期: 満6~12歳まで(小学校在学期間)
思春期: 二次性徴の始まりから完成まで(11歳前後~18歳頃まで)
子どもは体形も体のサイズも大人と違うだけでなく、体の内部の働きも異なっています。ここでは、成長・発達が著しい0~6歳の子どもの体の特徴を紹介します。