仮にある投稿について、プライバシー権や肖像権の侵害が認められた場合、その投稿を拡散した側にも責任は生じるのか。清水弁護士は、Twitterのリツイートなど、拡散した側の責任が問われる可能性はある、としたうえでこう付け加える。
「拡散した目的や投稿の内容によって個々に判断されることになります」
また、「撮影者が父親」の投稿については、
「『撮影者が父親』が事実でなければ名誉毀損の可能性が出てきますが、拡散した人に責任が生じるかはケース・バイ・ケースです」
と解説する。
清水弁護士によると、少年側が取れる手段は、各サイトに対して削除請求をすることくらいしかないという。だが、「デジタルタトゥー」ともいわれるように、次々に拡散されていく状況では、情報を完全に消し去るのは不可能に近い。
過去にもアルバイト先などで迷惑行為をした動画が出回って、当事者が袋だたきにされた事例などは多くある。なぜ同じようなことが繰り返されるのか。清水弁護士はこう推察する。
「今回と同じような騒動は6~7年おきに、20歳くらいの若い人たちが起こしていると指摘されています。われわれ大人は、またか、と思いますが、彼らは前回の騒動のときは幼かったので、騒動をまったく知らないケースもあるでしょう。こうした騒動はワイドショーが大きく取りあげますが、その時間は子どもは学校にいますからね。子どもにスマホを持たせるときに、家庭でしっかり教える必要があると思います」
そして、最後にこう注意をうながす。
「若い人は、ネット上に軽い気持ちで投稿するリスクを強く認識する必要があります。また、これは大人も含めてですが、ネット上のクローズドな場に投稿したとしても、その空間にいる人みんなが同じネットリテラシーを持っているわけではありません。コピーされて流出するリスクがあることを認識してほしいと思います」
悪質な迷惑行為をしたとはいえ、ここまで袋だたきの状況になっていることには、少年の今後を心配する声も出ている。この現状は、抑制する必要がある。
だが、少年側が取れる手段は極めて少ない。浅はかな行為を、悔いてもどうにもならないのがネット社会の現実なのだ。
(AERA dot.編集部・國府田英之)