■「不思議の国のアリス症候群」は何科に行けばいい?
残念ながら不思議の国のアリス症候群は医療従事者の間でも認知度が低く、専門的に診ている病院はほとんどない。そのためまずはかかりつけの病院に行ったほうがよいと渡邊医師は言う。
「子どもの場合は物事を客観視する能力が乏しく、言葉もつたないからうまく説明できない。だから、いかに『普段と違う』ことに親が気付くかが大事です。疑われる場合、かかりつけの小児科医に、子ども自身から直接話を聞いてもらうのがよいでしょう。キーワードとしてはやはり『大きく見える』『小さく見える』といった言葉が出てきたら不思議の国のアリス症候群の可能性があります」
一概には言えないが、渡邊医師によると「そこにある」ものが現実とは異なる見え方をするのが不思議の国のアリス症候群の特徴、「ない」ものが「ある」ように見えるのが精神疾患の特徴だという。後者の一例を挙げると、誰もいないのに「部屋の中に大きな人がいる」ように見える現象だ。
忙しい日々を送る親からすれば、「子どもが空想を話しているのだろう」とつい聞き流してしまいがちだ。しかし、原因がEBウイルスなのだとすれば、その影響は侮れない。
EBウイルスは日常生活が著しく損なわれる強い倦怠感や疲労感が長期間続く「慢性疲労症候群」、大脳の神経細胞が過剰興奮することで発作が起こる「てんかん」などの原因とも言われ、一度感染すると脳や肝臓へのダメージが長期にわたり残る可能性もあるのだ。
最初は軽い症状しか出ないため見過ごされがちだが、「たかが風邪」とばかにしないことが大事なようだ。
(文/酒井理恵)