「まもなく民主主義が寿命を迎える」よりエマニュエル・トッドほか著『2035年の世界地図』※Amazonで本の詳細を見る
「まもなく民主主義が寿命を迎える」より
エマニュエル・トッドほか著『2035年の世界地図』
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 その文脈の中で、コロナ禍が到来したのです。コロナ禍は「老人のパワー」を生み出しました。「老人支配」と呼んでもいいものです。

 というのも、コロナは高齢者にとって危険だったので、彼らを守るために――私もその高齢者の一人ですが――、ロックダウンなどの措置を通じて守られました。しかし、同時に若い人たちの生活を破壊したのです。

 パンデミックで50歳以上の人々、特に80歳以上の高齢者が高い比率で亡くなりました。

彼らを保護する必要がありました。私がこうしてコロナ禍を生き延びているという事実に文句を言っているのではありませんよ。

 しかし、ロックダウンは若い人たちの生活を破壊したのです。これは民主主義の消滅におけるもう一つの要素なのです。

■民主主義は今後も破壊され続ける

――あなたが指摘する民主主義の後退あるいは破壊は一時的なものなのでしょうか、それとも今後も続くものなのでしょうか。

 続きます。間違いありません。2010年代後半で私が衝撃を受けたのは、あちこちで、いわゆるポピュリストの運動が起きたことです。米国ではトランプのような人が支持され、英国ではブレグジットを求めた人たちがいます。

 2022年秋も、社会民主主義のスウェーデンの選挙で、いわゆる極右がかなりの得票率を得ました。イタリアでも極右の伸長を目の当たりにしました。これらすべての現象は、ある種の民主主義に戻ろうとしているとも解釈できます。

 もちろん、エスタブリッシュメントの人たちは、民主主義に戻ろうとしているなんて言ってはいませんね。私は知的活動の観点から言えばエスタブリッシュメントかもしれませんが、彼らのようなエスタブリッシュメントではありません。

 私は、これらの極端な右翼運動を、基本的に反民主主義とは見なしていません。むしろ逆です。

 私は民主主義について、合理的でバランスの取れた見方をしていると思います。民主主義は平等で、それは国民共同体の中での平等です。しばしば否定されますが、民主主義の出現には、排外的な要素が常にあります。

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