そして恐らく間違いないのは、それこそ命懸けで、いい映画を見逃すまいとの気概で、選考にのぞんでいる委員の方々がたくさんいらっしゃると思うんです。
私めが主演した映画「さがす」は、それこそ低予算ですが、「席巻」と言って差し支えないほど、各賞にノミネート、さらに受賞もしました。
これまた非常に低予算の、僕の初監督作品「memo」は、公開劇場数館という、かなり小規模の作品だったにも関わらず、日本でも屈指の歴史を持つ、老舗の映画祭の実行委員の方が高く評価してくれ、招待されました(ちなみにその映画祭に同じく監督としていらしていた、津川雅彦さんからの「映画は規模じゃないぞ」との叱咤は、今も僕の宝物です)。
逆に、高い予算の作品も、当然といえば当然ですが、それこそ皆、死に物狂いで、勝負を賭けて、作品を創っています。
件のツイートをした夜、落ち込みのあまり、とてもこのままでは眠れなさそうで、「はるヲうるひと」のプロデューサー・飯塚達介、そして主演の山田孝之と呑みました。てか、駆けつけてくれました。
怒られました。
特に孝之に。
「先輩ですが一言いいですか」と急に言うので、なんだろと思ったら、「ツイッター、やめちまえ」と。
さらに孝之には「功を焦るな」という趣旨のことも言われました。
ツイートを見て心配して連絡してきてくれた安田顕とは電話で話しましたが、とても愛のある叱咤をもらいました。
忙しいにも関わらず、少しだけ顔を出してくれた黒木華は、終始笑顔でいてくれました。
最後に残ったのは、孝之、飯塚、僕。
帰り際、タクシーに乗ろうとした孝之は、急に振り返り、僕に強めのハグをしました。そんな二人を、飯塚はずっと見守っていました。
創る人も、演じる人も、選ぶ人も、皆、必死。
だから、恐らく僕には、「負け惜しみ」を放出してる暇(いとま)などないのだと思います。
前へ。「memo」「はるヲうるひと」という、どの作品もそうであるのと同様に、関わったすべての人、ご覧頂いたすべての方々のさまざまな思いが詰まった、自分にとってかけがえのない作品のためにも、前へ。
そう気づいたことが、たくさんの友人から怒られた今回のことで唯一僕が得た「功」だと思っています。