ベトナムでの医療支援ボランティアの様子。右が清水医師、左は現地で師事した服部医師(本人提供写真)
ベトナムでの医療支援ボランティアの様子。右が清水医師、左は現地で師事した服部医師(本人提供写真)

■自分らしい生き方と患者を救う喜びを大切に

 開業医として患者の健康を支える祖父の姿に憧れ、中学生のときに医師を志した清水医師。慶應義塾大学医学部では「実学の精神」に触れ、自分の知識や技術を世の中で実際に役立てたいと強く思うようになった。

「医師の仕事ではすべての科が大切だと思っていたので、専門は何でもよかったんです。ただ、私はもともと団体行動が苦手で、自分らしく自由に生きたいと考えるタイプ。慶應の医局を見回したときに、考えが近いと感じたのは眼科のトップの先生方でした。『好きなことに堂々と挑戦していいから、一流の医者になって患者を救いなさい』というその理念にひかれました」

 そして眼科医となって3年後、自らベンチャー企業を立ち上げる。

「OUI Inc.は、中学時代からの同期3人で創設しました。ノリや勢いに任せた部分もあるので、後輩たちには『会社はもっと計画的につくったほうがいいよ』と話しています(笑)。今は、事業拡大のための新規上場を目指しています」

 眼科医としての臨床経験も重視する清水医師は、19年に「横浜けいあい眼科」を開院。地域に密着した診療にも力を入れている。

「日々の診療で腕が磨かれて知識がアップデートされますし、開業医という立場から、SECの機能や価格を客観視できるようにもなりました」

 通常業務に加え、講演活動や論文執筆、海外視察にも力を入れ、その日々は多忙を極める。現在の自身の働き方を、どう感じているのだろうか。

「好きなことしかしていないので、ストレスはありません。疲れることはありますが、そんなときに気分をリフレッシュしてくれるのは仕事での人との触れ合い。SECを試した人の『すごくいいね!』と驚く顔や、クリニックの患者さんの笑顔を見ると、また頑張ろう、と思えるのです」

(上野裕子)

※週刊朝日ムック『医者と医学部がわかる 2023』より

清水映輔(しみず・えいすけ)/医師。2013年、慶應義塾大学医学部卒業。2016年、大学の同期3人でベンチャー「OUI Inc.(ウイインク)」を設立。2017年、SEC(Smart Eye Camera)を開発。2019年、横浜けいあい眼科を開院。2020年より慶應義塾大学医学部眼科学教室特任講師に。2022年、東京都ベンチャー技術奨励賞を受賞