御料車のルームライトがついている。開いた窓から皇后雅子さまが顔をのぞかせて、手をふる。その笑顔には、柔らかさがにじんでいた。
天皇陛下が63歳の誕生日を迎えた2月23日午後4時過ぎ。天皇陛下と雅子さまは、宮殿での一般参賀と皇族方や三権の長、各国の駐日大使らが参列した「祝賀の儀」、そして上皇ご夫妻へのあいさつを終え、御所に戻った。
「天皇陛下ー。おめでとうございます」
「雅子さまあ」
半蔵門を通過する陛下と皇后雅子さまにお祝いの歓声があがる。この日の宮殿や外出を伴う日程が無事に終わった瞬間だった。仙洞御所への往路では、雅子さまの笑顔にはやや緊張感があったが、帰りは日程の大半を終えて安堵したような表情だった。
沿道の奉迎者のひとりは、半蔵門で御料車のルームライトをつけるのは珍しいと、上気した様子で話す。
「愛子さまそして雅子さまのお誕生日もそうでしたが半蔵門の通過時に限っては、車のルームライトはつけず真っ暗でお顔はよく見えません。しかし、昨日の天皇誕生日ではライトをつけて車もスピードを落としてくださった。おかげで開いた窓から両陛下のリラックスした笑顔を拝見できました」
この日の一般参賀で天皇ご一家と秋篠宮ご一家は、午前10時過ぎから3回、参賀に集まった人びとにあいさつをした。天皇陛下は、お祝いの言葉を述べた。
一般参賀では宮殿のベランダに天皇陛下を中心に集まり皇族方がお手振りをする。祝賀の日に欠かせない華やかな光景だ。
なかでも一昨年に成年を迎えた愛子さまの初々しさは、より注目を集めた。
「皆さん1人1人にとって、穏やかな春となるよう願っています」
天皇陛下が参賀で述べたお言葉通り、淡いピンク色のローブモンタントと共布の小さな帽子。ドレスの首元と袖口には薄いオーガンジーの布が重ねられ、帽子にも同じオーガンジーのボウ(リボン)飾りがあしらわれた。成年を迎えるにあたり、新調された装いである。