――欧米と日本などを一つの側とみて、もう一方に中国やロシアのような体制があるとすると、パンデミックへの対応について明確な勝者はいるのでしょうか。
本当に、いまのように2つの陣営が分かれるような状況にならなければよかったのに、と思います。世界がこれほど明確に分断されてしまったことが危険なことだと思います。両陣営の分かれ方にも、過去との類似点が多く見受けられます。第二次世界大戦だけではなく、第一次世界大戦にさえも、です。
私は、経済競争、特に中国と米国の競争は良いことだったと思います。それぞれの側が、明らかに利益を最大化し、損失を最小化しようとする。それで良い、と思います。場合によっては、国家権力を行使することは、経済的地位を改善するためであれば、一定の場合は容認されるとさえ思っています。しかし、世界が2つのブロックに分かれることについては、非常に問題だと思っています。私が甘すぎるのかもしれないのですが、「私たちは互いに異なる存在であるものの、相手に敵対するようなブロックに入ってしまうことがないようなグローバル化がある」と信じています。
ブランコ・ミラノビッチ
経済学者。
1953年生まれ。「エレファントカーブ」のモチーフによって先進国中間層の所得の伸び悩みを指摘し、所得分配と不平等に関する研究で世界的に知られている。世界銀行調査部の主任エコノミストを20年間務めた経験もある。主な著書に、『不平等について』『大不平等』『資本主義だけ残った』(みすず書房)など。