「『不平等』な世界で資本主義を信じる」より。ブランコ・ミラノビッチほか著『2035年の世界地図』※Amazonで本の詳細を見る
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 そしてもう1つは、「政治的資本主義」です。それを国家資本主義と呼ぶ方が好きな人もいます。どちらでもいいのですが、私はマックス・ウェーバーの「政治的」という用語の方が好きです。なぜなら、それは経済領域に対する政治的影響力に重点を置いているからです。これには、明らかにいくつかの国が当てはまります。ただ、中国に関して何が重要か、というと、中国だけが政治的資本主義の例というわけではなく、「中国の経験が他の国でも再現されている」ということです。

 中国の経験の系譜は、中国自身が主張しているところによれば、共産党があらゆる外国の支配を排除すること、さらに、国内の準封建的な制度を排除することに起源があります。ただ、中国共産党が実際に進めたことは、国家が役割を持つ資本主義、あるいは土着資本主義を作り出すこと、だったのです。これが私の好む中国の見方です。なぜなら、単純に現在の状況を見て、世界には一つの資本主義しかないと言う人が多いからです。いま概説した私のアプローチの利点は、中国の現在の立場を説明する上で、歴史的な側面を重視していることだと思います。

■“ハイパーパワー国家”アメリカ時代の終焉

――ロシアのウクライナ侵攻は、「ポスト冷戦期」の終わりを告げるものになるのでしょうか?

 ある意味ではそうだと思います。なぜなら、1990年代は、まさしく米国が非常に「傲慢」だった時代です。今回の事態は、ある意味で、本当にその時代の終わりと言えます。しかし、いまの非常に不確実な状況を考えると、これが本当にポスト冷戦期の終わりを記すという結論には、飛びつくべきではないでしょう。

 この戦争によって、プーチン政権が倒れ、ロシアの政策が変わるという可能性もある。この場合、過去に比べても、米国の重要性は一層増大することになります。ただ、たとえそうなるとしても、この戦争は一つの時代の終わりを表していると思います。それは、米国が「ハイパーパワー」として圧倒的な力を持った米国の時代の終わりです。そういった意味では、確かに2022年は一つの時代の終わりを表していると考えます。

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「ブロックなきグローバル」という理想