日本の場合はどうだろうか?
「RC-2、YS-11EBといった電波情報収集機が活躍するでしょう。どこまで詳細な電波の分析ができるかはわかりませんが、気球が電波傍受を行っているか、その情報をどう送り出しているか、確認できると思います」(同)
陸自の電子作戦隊には敵が発信する電波の解析や妨害を行う「ネットワ-ク電子戦システム」の配備も始まっている。
「ただ、このシステムは18キロも上空の気球の働きを妨げるのには向いていません。そのため、産経ニュース(2月21日配信)によると、陸自は24年度に気球にも対処できる『対空電子戦部隊』を新設するようです」(同)
進化する軍事用気球
さらに、米国では偵察用気球を撃墜するための気球の開発も進んでいるという。
「これは笑い話ではありません。ロッキード・マーチンなど、真面目にアメリカのメーカーは攻撃用気球の開発を行っていて、兵器見本市にも出品しています。移動するためのプロペラ付きで、偵察用気球の発信する電波に吸い寄せられるように接近して、ぶつけるか、自爆させて飛び散った破片で撃墜する。無人なので戦闘機パイロットが危険な任務を遂行しなくてすむ。1発約5000万円の空対空ミサイルと同程度のコストでできれば、十分にペイする、というわけです」(同)
すでにロッキード・マーチン製の偵察用気球はアフガニスタンやイラクで60機以上が実戦に投入され、実績を積んできた。それをさらに攻撃用に進化させようとしている。
今回の気球撃墜事件によって古くて新しい軍事用気球の実態が浮き彫りとなった。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)