タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
* * *
3月8日は国際女性デー。国連のアントニオ・グテーレス事務総長が先月27日に米ニュースクール大学で行った演説は、今の日本の危機的状況を想起させる内容でした。
「差別はすべての人を蝕(むしば)むものです。奴隷制や植民地主義が前世紀の汚点であるように、21世紀においては女性差別が私たちにとっての恥辱なのです。なぜならそれは許し難いだけでなく、愚かしいことだからです」「私たちは男性優位の伝統とともに、男性支配の世界に生きています。数千年にもわたってそうしてきたのです」「女性をヒステリックでホルモンに影響されがちだと嘲(あざけ)ったり、外見で決めつけたり、女性の身体機能をめぐる俗説やタブー、マンスプレイニング(女性を無知と決めつけて上から物を言うこと)や被害者たたき──女性嫌悪は至る所にあります」
また氏は、男性たちは危険な振る舞いや身体的な攻撃性、助けを求めないなどの男らしさの典型に押し込められているとも述べ、ジェンダー平等は男性の人間関係にも多大な利益をもたらすと指摘しました。マッチョな態度は気候危機の解決を阻むとも。
「ジェンダー平等は男性が数千年も手放そうとしなかった権力の問題です。共同体や経済や環境や人間関係や健康を蝕んできた権力の濫用(らんよう)の問題なのです。未来や地球を守るために、直ちに権力の形を変え、再分配せねばなりません。それが全ての男性が女性の人権とジェンダー平等を支持するべき理由なのです。私はフェミニストであることを誇りに思っています」
男性リーダーが女性差別に断固たるNOを突きつける力強いメッセージでした。ジェンダー平等の視点を欠いた政治がどれほど脆弱(ぜいじゃく)かを、いま私たちは日本で目の当たりにしています。
すべての人よ、フェミニストたれ。改めて心からそう訴えたいです。
※AERA 2020年3月16日号