14州で予備選があったスーパーチューズデーの2日前、中道派の有力候補であるブティジェッジ氏が撤退。中道派候補が絞られ、バイデン氏は一気に逆転を果たした。民主党候補者争いは、バイデン氏とサンダース氏の一騎打ちとなった。AERA2020年3月16日号は、選挙戦の様子やバイデン氏の勝因に迫る。
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「庭にバーニーの看板を立てたい。看板は残っているか」「バーニー・フォー・シニア、という垂れ幕を作ったけど、どんなところにかけたらいいか」「何かしたいけど、何をすればいいかわからないからここに来た」
南部テキサス州オースティンにあるバーニー・サンダース上院議員(78)の事務所には、数時間おきにボランティアや支持者が訪れる。全米14州で予備選挙がある3月3日のスーパーチューズデーを控え、スタッフボランティアたちは混乱状態になりながらも必死で働いていた。
カレン・フラハティ(71)は、スーパーチューズデーを前に、ニューヨーク市から1週間泊まり込みでボランティアに来た。
「私は、ベトナム反戦運動があった13歳の時から『革命』があると信じ続けてきた。今が、一番それに近づいている。今回バーニーが勝たなかったら、いつまでそれを待てばいいのか」
中西部イリノイ州シカゴから来ていたエレン・ガーザ(71)も、同じベビーブーマーの運動家だ。
「私たちが今バーニーを勝たせなかったら、4年後、8年後はどうなっていることか。その時に何かしようと思っても、私たちはもうボランティアをできる力がないかもしれない」
フラハティとガーザの戸別訪問に同行させてもらった。戸別訪問は日本では公職選挙法で禁止されているが、米国では票集めにもっとも有効な手段とされており、どの陣営も多くのボランティアを投入する。有権者名簿を渡され、割り当てられた住宅に向かい、約2時間で数十軒を訪問する。
私たち3人は、労働者階級のアパート群を訪ねることになった。気温30度に近い中、3階建てのアパート12棟を階段で上り下りする。ほとんど不在だ。20軒ほどのドアをノックして、やっと若い女性と子供が出てきた。だが、女性はすぐにこう言った。