東日本大震災の教訓から、13年、ペットを連れて逃げる同行避難が推奨された。だが、災害時は不測の事態も起こりうる。愛犬や愛猫の命を守るうえで、飼い主に問われるものとは――。AERA臨時増刊「NyAERA2020」から。
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東日本大震災では多くのペットが現場に取り残され、飼い主の元へ戻れなかった。その教訓を生かし、13年、環境省は災害対策ガイドラインを発表(18年に改訂)。「ペットは連れて逃げる」同行避難を推奨した。
とはいえ、避難先でペットが受け入れられるかどうかは、その時の状況による。
「動物の受け入れ可否や扱いについて最終決定するのは、避難所の責任者(施設管理者)です。防災担当が運営する避難所以外では『その施設の責任者』であって、その人にペット同行避難の知識や理解があるとは限りません」
そう語るのは、人と動物の防災を考える市民ネットワーク、「ANICE(アナイス)」代表の平井潤子さんだ。責任者とは、たとえば学校であれば学校長など、スポーツ施設なら自治体のスポーツ振興課を指す。
平時に取り決めがあったとしても、災害時には現場の状況が優先されることも覚えておきたい。
「被災時は不測の事態が起こります。ペット同行可の避難所に、近隣の病院から大勢の入院患者さんが身を寄せた例もあります。そのような状況では、どうしてもペットをその施設内に同行するのは難しいことがわかるでしょう」
そうした時のために、飼い主は何パターンもの対策を講じておくことが大切だという。
「2013年に伊豆大島を台風が襲った時、島外避難した動物を東京都獣医師会が一時的に預かりました。後日、帰島する人たちの中に、預かりリストにない犬連れの男性がいたんです。聞けば、『幼い子どもがいるので、災害時に犬にまで手が回らないのはわかっていた。台風接近と聞いて犬だけ飛行機に乗せて東京へ送り、親戚に託した』と」
この男性が示したものこそ、「理想の『飼い主力』だ」と平井さんは言う。