国会議員の逮捕という汚職事件に発展した日本の統合型リゾート(IR)。誘致反対運動も出るなか、日本進出を目指すカジノ事業者の狙いは何か。AERA2020年3月9日号では、米国大手IR事業者にインタビュー。カジノ開業に成功したボストンを事例に、誘致までのいきさつを取材した。
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世界でカジノ事業を手がける米国の大手IR事業者、ウィン・リゾーツ。日本でのIR事業開発を手がけるウィン・デベロップメント社長のクリス・ゴードン氏が来日、取材に応じた。
──日本はIRの市場としてどう魅力的なのでしょうか。
日本は強力な経済がありながら、カジノがない最後の国。IRの市場性でいうと、マカオほどは大きくはないが、ラスベガスよりは大きいと見ています。
──ウィン・リゾーツは候補地を大阪から横浜に変えました。
大阪もいいのですが、市場性からも横浜はさらにベストフィットだと考えました。経済や観光も良好。横浜でIRをやれば必ず成功すると思う。
──横浜でIRの反対運動が起きています。ウィン・リゾーツが昨年6月にIRを開業した米国マサチューセッツ州のボストンエリアにも根強い反対があったと聞きます。
ボストンでは当初、地元から『経済発展は欲しいがカジノはいらない』と言われていました。我々は市民の声に耳を傾け、数年をかけて地元に説明を尽くしました。IRができることで経済発展にどう貢献するか。また、心配の種と思われる犯罪率にはデータを示し、依存症には対策措置を取ることを説明したのです。市長とは5年の間、毎週のように会合を重ねました。
ボストンの六つのプロスポーツチームとパートナーシップを結び、共同でマーケティングを行いました。美術館や交響楽団を支援して展示会や演奏会を開き、高校や大学にはカジノで働ける人材の育成プログラムも行いました。
──お金で懐柔するのかとの批判は出ませんでしたか。
押し付けるようなやり方はせず、すべてのプロセスをオープンにしたので、そうした声はありませんでした。その効果もあり、IRをやると決めてから3年後に行われた住民投票では86%の賛成を得ることができました。横浜でも良いIRづくりの提案をし、詳細に説明することが大切だと考えています。