こうした新世代ヴィーガンたちは、イベントやSNSを通じてつながっている。その礎を作ったのは、日本ヴィーガンコミュニティの代表で神戸大学3年生の工藤柊(しゅう)さん(20)だ。工藤さんは高校3年の11月のある日を境に、ヴィーガンになった。
いつものように唐揚げ丼を食べて、図書館で勉強した帰り道。車にひかれた猫を見かけたのだという。何度もひかれてぺちゃんこになってしまった猫にタオルをかけ、手を合わせて、泣きながら家に帰った。車の運転手や放っていた通行人に怒りが湧いた。家に帰ってネットで様々調べているうちに、犬や猫だけでなく、牛や豚などの家畜も同じことではないかと気づいた。それまでは環境問題や貧困など人間同士の問題に注目していた。でも、人と動物の間にも不条理な現実がある。他の動物の命を奪って自分は生きている。
翌朝、母親に「今日から肉とか卵とか牛乳食べへんわ」と宣言した。初めの2週間はほとんど野菜鍋と塩にぎりだけで暮らしたという。何を食べたらいいのか困った経験から、ブイクックというヴィーガンレシピサイトも立ち上げた。今では700を超えるレシピが載っている。
今回出会った若者たちに、「ヴィーガンの人が増えてほしい?」と聞くと、それは嬉しいけど、無理強いはしたくないという声が多かった。
他人の意思決定に口を出すことはしない。でも誰かがヴィーガンになろうと思ったときに、受け入れられやすい社会にしたい。例えば目指すのは、すべての飲食店にヴィーガン対応メニューが一つある状態。イベントに来ていた女性は、「そうすればヴィーガンでもそうじゃなくても、一緒に食事が楽しめるから」と話してくれた。
ゆるく、オープンで、軽やかな、新世代ヴィーガンたちの輪が広がっている。(編集部・高橋有紀)
※AERA 2020年3月9日号