ヒップホップ・アクティビストのZeebraさんが「AERA」で連載する「多彩な野菜」をお届けします。1997年のソロデビューからトップとしてシーンを牽引し続け、ジャンルや世代を超えて多くの支持を得ているZeebraさん。旬の野菜を切り口に、友人や家族との交流、音楽作りなど様々なエピソードを語ります。
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三つ葉って、日本人のおもてなし、繊細さの象徴って感じがします。結んだ三つ葉がちょこんと添えられることで、小さな器の中で箱庭のような世界が完成したり、お吸い物の色彩と香りができあがったり。最初から他の食材と一緒に煮るわけじゃなくて、歯ごたえや香りを考えて最後に添える気遣いが素敵です。でも実は高級食材というわけでもないから、たまにドカッと三つ葉がおひたしになって出てきたりする。おいしいんですが、何だろう、あの背徳感。「え? こんなに食べちゃっていいんですか?」っていう。
僕、これってアイドルの存在と似てると思うんです。僕らが子どもの頃のアイドルって唯一無二の存在感があって。いなくてもテレビ番組は成立するけど、いるだけですごいインパクトでした。でも最近のアイドルは大勢でひとグループですよね。松田聖子さんや中森明菜さんが、20人ぐらい集まって「ユニット組みました」って言われたら、怖くないですか。どこを見ていいかわからなくなりそうな気がします。三つ葉のおひたしに感じる背徳感と同じじゃないかな。
※AERA 2020年3月9日号