例年、多くの親たちを悩ませている保活。厚生労働省は、今年の待機児童数は過去最少だったと発表しているが、それでも希望した保育園に入れない保活の“ミスマッチ”は後を絶たない。しかし一方で、こうした状況を変えるべく策を講じている自治体もある。AERA 2020年3月2日号では、保育園をめぐる問題や、自治体の取り組みを取材した。
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各自治体も、エリアごとの需要の見通しに苦慮している。このエリアに保育園が必要だとわかっても、敷地の確保などがスムーズにいかない場合もある。その結果起きるミスマッチを、斬新な策で解決しようとしているのが、兵庫県明石市だ。
駅近の土地を利用し200人規模の保育園2園とそれぞれに駐車場を整備、園駐車場を利用しての「パークアンドライド」を始めた。登録した保護者は、自家用車で登園すると園の駐車場に車を止めたまま出勤。夕方のお迎え時に、子どもをピックアップしてそのまま車で帰れるというわけだ。これなら、自宅から遠方の園でも送迎がスムーズだ。遠方という理由で、選択肢から排除する必要がなくなるため、ミスマッチを減らせる。
市の担当者は胸を張る。
「園から徒歩5分の場所にJRの駅があるので、園の駐車場に車を止めて駅から出勤する新しいスタイルを提案しています」
このミスマッチ解消策は、大都市では用地確保の問題もあり難しいかもしれないが、ほかの自治体でも、駅近くに送迎ステーションを設け、子どもをバスなどで遠方の園と行き来させるシステムを導入するところがある。工夫次第でミスマッチを少しでも防ごうという動きだ。
一方、地方で深刻なのは保育士の確保だ。待機児童数全国ワースト4位の岡山市は、深刻な保育士不足が続いている。原因は保育士の県外流出。市内の保育士養成校を卒業した人材の約6割が、他都市へ出ていく。
「市内へ就職する少ない保育士を多くの園で奪い合う。新しい園をつくるほど、保育士が各園に散らばって確保が難しい」
と、「岡山市私立認可保育園・認定こども園園長会」の高山学会長。保育士が足りない施設が3割近くを占め、これも待機児童の原因になっているという。