61歳で公立小学校の校長を定年退職した福田晴一さんが「新入社員」として入社したのはIT業界だった! 転職のキーワードは「プログラミング教育」。全国を教員研修で回っているうちに63歳となった。必修化直前、現状を直視してみると……。
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「初等中等教育からプログラミング教育を必修化します」
これは、2016年4月の産業競争力会議で、安倍首相が公表した言葉だ。これを受けて、文部科学省は、小学校では学習指導要領の改定となる今年の4月から、中学校では改定となる来年の4月から、プログラミング教育が全面実施となる。
つまり、全国の約3万校の小中学校で「プログラミング教育」が導入されるわけだ。国語、算数等の教科書を伴う教科教育とは違い、各教科・領域の授業の中で実施するので、教科書を伴い評定のある教科とは別物である。
当然、小学校教員にとっては「教わったことがない、教えたことがない」の未知の領域への取り組みなだけに、教育委員会をはじめ各校は、喧々囂々(けんけんごうごう)、侃々諤々(かんかんがくがく)のざわめきから始まった。
文部科学省は、学校現場にわかりやすく解説した「プログラミング教育の手引き」をこの3年間に第3版まで公開したり、ホームページに学校で容易に取り組める研修会資料を掲載したりして、理解、周知の徹底に務めてきた。
それに対して現場はどうだったか。
決意も新たに「プログラミング教育必修化」に取り組んだ教育委員会や学校は、アンテナを高く張り、情報収集に努め、計画的に取り組んできた。
しかしそれは一部の教育委員会、学校であり、現実はそう甘くはない。
教育委員会で言えば教育長や幹部職員、学校で言えば管理職や研究主任が、どれだけプログラミング教育の必要性を理解し、次世代教育のリテラシーとして認識できるかに依る点が大きく、結果的に地域格差、学校格差が生じたわけだ。
私は、この2年間に30を超す自治体、70校の小学校現場を見てきた。