「最近まで、自分の残業時間を記した書類があることすら知りませんでした。でも、毎月15時間分の超勤書類が私の名前でつくられていたんです」
管理者側がこの職員の名前で書類を作成し、本人に提示することなく運用していたのだ。
■ウソの書類作成を強要
さらに信じがたい事態もあった。ある部署では昨年9月、これまで管理者側で作成していた残業書類を、自身で作成するよう指示があった。労働基準監督署の指導もあり、本部から各部署に対して「適切な取り扱い」が指示されたためという。当然職員は実働時間を記録して書類を提出したが、それに対し、勤怠管理者はこう言い放った。
「あなたは15時間分しか出ないルール。書き換えてください」
管理者側で作成していたウソの書類を、職員自身に作成させようとしたのだ。そうでなければ「残業代を支払わない」とも。
労働法制に詳しいウカイ&パートナーズ法律事務所の上野一成弁護士は、こう断じる。
「残業代の未払いは典型的な労働基準法違反ですし、労働時間を管理していないのは労働安全衛生法に反します。さらに、管理者側がウソの超過勤務書類を作成したり偽造を指示したりしていたのなら、そもそも管理する意思がなく、より悪質です」
指摘に対し、JSC側はどう答えるか。2月19日、人事課長らがアエラの取材に応じた。
「スポーツ庁からの受託事業を担当する70人弱の職員に対して、一律の超過勤務手当を支払っています。一部でご指摘のような取り扱いがあったのも事実です。遺憾に思っております」
未払い分を含め、新年度に向けて改善策を検討するという。職員たちはメダルを目指す選手と同じように情熱を持って働いていることを、組織は強く認識すべきだ。(編集部・川口 穣)
※AERA 2020年3月2日号
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