新築マンションはバブル最盛期以来29年ぶりの高水準を記録した。一方、発売から1カ月の契約率はバブル崩壊以来の不調だった。つまり、「売れていない」のに「価格が上昇していることになる。不動産市場で一体、何が起きているのか。AERA2020年2月24日号では、そのカラクリに迫る。
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なぜ売れ行きが必ずしも良くないエリアでさえ、物件の価格が上がり続けるのか。
大きな理由の一つが、「メジャーセブン」と呼ばれる大手不動産会社による「寡占化」だ。
メジャーセブンは住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンスの7社を指し、東京カンテイによると、首都圏のマンション市場で50%を超えるシェアを握る(他社との共同事業を含む)という。これら大手の多くはオフィスビルや物流倉庫など多角的に事業を行っており、業績はいずれも好調。分譲住宅の売れ行きが多少悪くなっても、焦って値下げに走る必要がない。
その代表格と言われるのが、住友不動産だ。同社は、手がける物件の89.7%で、竣工後も販売を続ける。広報部の鈴木俊哉さんはこう説明する。
「当社はかなり以前から、即日完売や竣工までの完売を目指すのではなく、竣工時に売れ残っても、焦って値引きせずじっくり販売して適正な利益を確保しようとする考え方をとってきました。かつては、総戸数2千戸を超える物件を、10年かけて売ったこともあります。最近は他社さんでも、こうした販売方法を取るところが増えています」
かつてのマンション販売は、短期決戦の即日完売を目指し、すぐに次の物件に軸足を移す販売スタイルが多かった。だが業界関係者は「最近では物件が即日完売すると、『これは値付けが安すぎたせいで、本当はもっと利益を出せたはず』と、かえって担当者が左遷されるケースもある」と打ち明ける。
東京カンテイによると、首都圏で大手不動産会社が販売した新築マンションのうち、竣工後も販売を続けた物件の割合は、99~03年は18.4%だったが、14~18年には44.4%に増加した。竣工時までに完売を目指す売り方が主体だった野村不動産でも、99~03年の7.6%から、14~18年は25.7%へと、3倍以上に増えている。