深野康彦(ふかの・やすひこ)/ファイナンシャルリサーチ代表。個人の資産運用手法に精通(写真:本人提供)
深野康彦(ふかの・やすひこ)/ファイナンシャルリサーチ代表。個人の資産運用手法に精通(写真:本人提供)
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 新しいキャリアという理想を描いても、お金という現実が大きな壁となることもある。AERA2020年2月17日号は、この問題にどう向き合えばいいのかを専門家に聞いた。

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 働き方を変えたいと思うとき、ネックになるのはお金の問題だ。ファイナンシャルプランナーの深野康彦さん(57)は、「ライフプランを俯瞰(ふかん)した支出を認識しておくことが大事」と話す。

 支出で負担が大きいのは住宅ローンだ。生活をダウンサイジングしても好きな仕事に移りたい、と考えている人は住宅ローン完済のめどをつけた上での決断を勧めたい。

 子どもがいる人は教育費も念頭に置く必要がある。

 2018年度の文部科学省の子どもの学習費調査によると、公立中高に進学した場合は計283万7千円、私立中高に進学した場合は計712万9千円かかる。大学4年間にかかる授業料の目安は、国公立だと理系文系問わず250万円弱。私立文系では約400万円、私立理系で500万円強かかる。

 50代になると親の介護も始まる。生命保険文化センターの18年度の調べで、介護の開始に伴う一時的費用は平均69万円。加えて月額平均7万8千円かかる。平均54カ月余り続く介護期間をかけると、計421万2千円にも上る。

 こうした支出に対する備えと道筋がついているか。そう考えると、転職する場合はやりがいも大事だが、収入の大幅ダウンは避けたい。深野さんは「労働市場での自分の価値を客観的に把握し、今の収入が分相応であれば、居づらくても我慢して会社に残る選択を取るべきでしょう」とアドバイスする。

 40~50代は今の会社にいても、収入のピークが過ぎている可能性もある。留意しなければならないのは、給与は徐々にアップするが、ダウンするときは1割、2割とガクンと減るということだ。年収600万円なら480万円、年収800万円なら640万円まで落ち込む計算だ。

「役職定年、60歳の再雇用、65歳の年金受給開始の段階で少なくとも3回は減収が訪れます。40~50代は常にリストラのターゲットになることも自覚しておく必要があります」

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