小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中
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2019年、安倍首相とメディア幹部、記者との会食は24回に及んだと報じられた。今年1月、首相官邸に入る際、記者からの質問に答える安倍首相 (c)朝日新聞社
2019年、安倍首相とメディア幹部、記者との会食は24回に及んだと報じられた。今年1月、首相官邸に入る際、記者からの質問に答える安倍首相 (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 なぜ主要メディアの幹部たちは首相と会食をするのか? ネットではもちろん、新聞の投書欄にも読者の疑問が寄せられています。私もかねて知りたいと思っていました。なぜ、「レストランで一緒に食事をする」ことが必要なのか。記者会見以外の首相との接触の機会が必要だというなら、会議室での意見交換会ではダメなんでしょうか。

 いうまでもなく、報道機関の役割は、人々の代表である政治家が不正をしたり権力の濫用(らんよう)をしたりしないように監視することです。「それを詳しく報じるためには、取材対象の懐に潜り込んで情報をとることが重要だ」というのが記者の伝統なのでしょう。でも、今はよい記事だけ書いていれば人々はわかってくれるという時代ではありません。どんなに事実に肉薄した良記事でも、それを報じるメディアの態度や行動に信頼がおけなければ、読者は記事を信用しません。メディアの取材過程や権力との距離の取り方に対する世の中のまなざしは厳しくなっています。「報道という権力」の監視を行うのは市民であるという意識が高まっているのです。

 それに応えるには、丁寧な説明が必要です。なぜ首相と一緒に食事をすることが必要なのか、どんな目的で参加しているのか、なぜ批判されてもやめないのか。中には「たとえ首相と会食しても、翌日に厳しく疑惑を追及する記事を書けば、癒着しているのでも懐柔されているのでもないと読者にはわかるはずだ」という記者の意見もあります。でもそれはむしろ、なぜそんな厳しいことを書くのに前日に会食なんてしているんだという不信を招くだけでしょう。疑惑を追及されている首相からすれば、人々のメディア不信が高まるほど好都合です。

 報道各社は、会食をやめない理由の説明を。メディアの自己開示こそがメディア不信の処方箋です。

AERA 2020年2月10日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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