マイクロ波マンモグラフィーは表面をなぞるだけ。特別なコツはないため、超音波検査のように技師や医師の腕によるばらつきはない(写真:木村建次郎研究室提供)
マイクロ波マンモグラフィーは表面をなぞるだけ。特別なコツはないため、超音波検査のように技師や医師の腕によるばらつきはない(写真:木村建次郎研究室提供)
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X線マンモグラフィーで撮影した乳がん患者の乳房。乳房全体が白く映る「高濃度乳房」の特徴がみられ、がん組織と正常組織の判別が難しい(写真:木村建次郎研究室提供)
X線マンモグラフィーで撮影した乳がん患者の乳房。乳房全体が白く映る「高濃度乳房」の特徴がみられ、がん組織と正常組織の判別が難しい(写真:木村建次郎研究室提供)
同じ患者の乳房をマイクロ波マンモグラフィーで撮影した3D画像。左右ともにがんの位置や形が3次元でくっきりと映し出されている(写真:木村建次郎研究室提供)
同じ患者の乳房をマイクロ波マンモグラフィーで撮影した3D画像。左右ともにがんの位置や形が3次元でくっきりと映し出されている(写真:木村建次郎研究室提供)
AERA 2020年2月10日号より
AERA 2020年2月10日号より

 がんに備えるにはリスクを把握すること、そして早期に見つけることが大事だ。AERA2020年2月10日号は、日々進化する検査技術の最前線を取材した。

【乳がん患者の乳房をマイクロ波マンモグラフィーで撮影した3D画像はこちら】

*  *  *

 ムギュッとつかまれ引っ張られ、挟まれたと思ったら、これでもかと押さえつけられる──。

 経験者はもう何のことかおわかりだろう。

「早期発見のためには仕方ない」と諦めていたX線マンモグラフィーのあの痛みから解放される日が、近づいている。しかも、痛くないだけでなく、従来のX線マンモや超音波検査に比べても精度が格段に高いという。それが、神戸大学発ベンチャー「インテグラル・ジオメトリー・サイエンス」(IGS)が開発中の「マイクロ波マンモグラフィー」だ。

 この新しい検査機では、乳房表面をなぞりながら、電波の一種であるマイクロ波を乳房内部に放射状に照射。がん組織に当たって跳ね返った波動を数秒で解析し、3D画像に映し出す。その画像はまるで乳房の中を透視しているかのよう。がんの姿がくっきりと浮かび上がり、1ミリ未満の極小がんも発見できるというから驚きだ。

 この画期的技術を可能にしたのは、IGSのCSO(最高戦略責任者)で神戸大学数理・データサイエンスセンターの木村建次郎教授が成し遂げたブレークスルー。通常、電波・音波などの波が障害物にぶつかると波は散乱する。障害物の位置や形状がわかっていれば、どのように散乱するかは物理学の基礎方程式で計算可能だ(順問題)。しかし波動の観測データから未知の物体の位置や形状を計算し、画像化するのは極めて難しい(逆問題)。木村教授は長年未解決だったこの「散乱の逆問題」と呼ばれる応用数学上の問題を、2012年、世界で初めて解くことに成功した。

 従来の検査法には課題があった。X線マンモは乳がんや早期乳がんのサインである小さな石灰化を映し出すことが得意だが、50歳未満のアジア人女性の8割が相当する「高濃度乳房」だと乳がん組織が乳腺組織と混じりあって全体が白っぽく見えてしまう。

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