「女性の乳房はほとんどが脂肪。乳腺組織はコラーゲンでできた繊維です。脂肪は柔らかく、コラーゲンの繊維は固い。ところが、がん組織も同じように固いんです。X線は固いものと柔らかいものを見分けるのは得意ですが、どちらも固いので区別がつきにくいのです」(木村教授)

 高濃度乳房の場合は、超音波検査が有効と言われるが、音波はポリマーである脂肪では伝わりにくく、深いところまでは届かないという欠点がある。X線と超音波の欠点がないのがMRI(磁気共鳴画像法)だが、問題は乳がんを正確に映し出すには造影剤が必要なこと。造影剤は1.9万人に1人の割合でショック症状を起こすリスクがあり「何百万人という検診レベルで使うには危険すぎる」(同)。

 一方、マイクロ波は高濃度乳房であってもよく通り、深くまで到達する。また、がん組織に当たると脂肪とは誘電性が異なるためよく跳ね返る。その結果、先ほどの「散乱の逆問題」さえ解けたならば、極めてクリアにがんの位置や形を検出できる。しかも、使われるマイクロ波のパワーは携帯電話などよりはるかに微弱で、人体に無害。X線のような被曝もない。

 木村教授によると20年度初めまでには商品機が完成し、その後、治験を経て、21年には発売を開始する予定だ。

「検査費用は5千~6千円程度でX線検査と同じレベルになる見込み。現状で約4割の乳がん検診の受診率を9割以上に引き上げ、多くの乳がん患者を救うのが目標です」(同)

 次に紹介するのは、「将来、大腸がんになるリスク」を見つける「コリバクチン検査」。こちらは、静岡県立大学発ベンチャーの「アデノプリベント」が昨年8月からサービスを開始した。

 どんながんも早期発見が大事だが、とりわけ大腸がんは他のがんに比べ進行が遅いため、早期に見つければ9割が治るとされる。にもかかわらず日本では大腸がん検診の受診率が世界的にも低く、部位別死亡者数は男性で3位、女性で1位だ。

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