AERA 2020年2月3日号より(撮影/写真部・掛祥葉子)
AERA 2020年2月3日号より(撮影/写真部・掛祥葉子)
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房総半島の東沖、水深約5700メートル地点で見つかったプラスチックごみ/2019年9月(写真:JAMSTEC提供)
房総半島の東沖、水深約5700メートル地点で見つかったプラスチックごみ/2019年9月(写真:JAMSTEC提供)

 海洋生物に影響を与えるプラスチックに対して、世界中で削減への動きが広がっている。海洋プラスチックの専門家の中嶋亮太さんも「プラなし生活」を実践する一人だ。AERA2020年2月3日号は、そのきっかけや考え方などに迫る。

【写真】房総半島の東沖、水深約5700メートル地点で見つかったプラスチックごみ

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 海洋研究開発機構の研究員、中嶋亮太さん(38)は、海洋プラスチックの研究をしながら「プラなし」生活を実践している。

 海のプラスチックごみは、2050年には魚の量を超えると言われている。プラスチックは自然に還ることはなく、そのまま海中を漂い続ける。人体への影響はわかっていないが、これを海洋生物が食べることで、人間の口に入る可能性は大きい。

「昨年9月、水深5700メートルの深海に潜って調査したら、1984年に作られたレトルトのパッケージが見つかったんです。1億5千万トンのプラごみが海にあると言われていますが、そのほとんどが海のどこにあるかわからない。我々が確認できるのは氷山の一角に過ぎません」

 少しでもプラごみを減らすため、中嶋さんは自身が運営するウェブサイト「プラなし生活」でプラスチック製品の代わりに使えるエコアイテムを提案している。歯を磨くときは馬毛や竹歯ブラシを使い、炊飯器はフッ素樹脂でコーティングされたものではなく、炊飯鍋を選ぶ。鍋としても活用できて、省スペースにもなる。トイレットペーパーが入っているプラスチック袋を排除すべく、段ボールで届く業務用を注文という徹底ぶりだ。

 実は中嶋さんも、以前はプラスチックにあふれた生活をしていたという。意識が変わったのは、16年の米サンディエゴへの留学からだ。住民投票でレジ袋の無償配布が禁止されたばかり。大学キャンパスの中には給水用のマイボトルステーションが設置され、多くの人がマイボトルを手にぶら下げている。「使い捨てはダサい」という感覚に馴染むのに時間はかからなかった。それよりも、帰国してからのほうが衝撃は大きかった。中嶋さんは言う。

「日本は“包まれ度”が高い。たった一本のバナナでさえ袋詰めされていることもある」

 だが、7月からレジ袋の有料化が始まるなど、少しずつではあるが日本も変わり始めている。

「プラスチックを過剰に使った商品を避けると、長く使える、上質なものを選ぶことになる。商品選びに迷いがなくなり、結果的にQOL(生活の質)も上がります」(中嶋さん)

(編集部・福井しほ)

AERA 2020年2月3日号より抜粋