IR事業を巡り現職国会議員が逮捕される事件が起きた。逮捕された議員は、日本のIR事業への参入を目指していた中国企業から賄賂を受け取ったとされている。AERA 2020年1月27日号では、IR疑惑や日本のIR事業をめぐる現状について取材した。
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カジノを含む統合型リゾート(IR)事業を巡り、衆院議員の秋元司容疑者(48)が収賄容疑で逮捕された。秋元容疑者はIRを担当する内閣府の副大臣を務めていた2017年9月、日本のIRへの参入を目指していた中国の「500ドットコム」から現金300万円を、他にも講演料名目などで計約700万円の賄賂を受け取ったとされる。さらに別の現職国会議員にも現金が配られたと見られている。
IRは汚職の温床なのか。
500ドットコムは中国でスポーツくじやロトくじ、海外でオンラインポーカーなどのカジノを行う民間企業。ホームページには、開催中の欧州サッカークラブチーム選手権の勝敗を予想するサッカーくじが並ぶ。
14年に92億円(5.8億元)を売り上げたが、中国政府がオンラインくじの規制強化に乗り出した15年以降は業績が悪化。18年の売り上げはピーク時の2割程度となる約20億円(1.26億元)まで落ち込み、純利益は73億円(4.54億元)の赤字となった。
同社がカジノ事業へ参入したのは、欧州などでオンラインカジノを手掛ける「ザ・マルチ・グループ」(マルタ共和国)を17年に買収したのがきっかけ。日本のIRへの参入を目指して日本法人を設立し、中国人観光客の多い北海道や沖縄に4500億円程度の投資を計画していた。
「カジノIRジャパン」編集長の小池隆由さんは、500ドットコムが国内IRの事業者に選定される可能性はほとんどなかったと話す。
「逮捕された日本人の担当者とは1度だけ面識がありますが、IRの世界から遠くにいる人でした。500ドットコム自体にもIRの運営実績がない。日本政府が進めようとしているIRは事業者にかなり厳しい要件を課しているため、実績がなければ選考の土俵にすら乗りません。今回の事件をIR疑惑と呼ばれると違和感があるぐらいです」