■「桜を見る会」と類似
下院情報委員会と司法委員会は、議会運営の規則に基づき、弾劾調査を進めていた。9月24日にペロシ下院議長が弾劾調査の開始を発表し、弾劾条項の発表まで、わずか77日という短い期間だったが、両委員会の公開ヒアリングの中継では、複数の政権に仕えた超党派の叩き上げ外交官らが、過去からの規則やプロトコルに基づいて、トランプ氏の電話会談の内容が、いかに国家安全保障を危うくするか強調した。また、法律専門家らは、具体的な法律を示し、なぜ会談内容が「弾劾」に相当するのか見解を示した。
それにもかかわらず、公開ヒアリングでは、共和党議員が質疑の際「証拠がない」「発言がまた聞きばかりだ」と外交官や軍幹部を繰り返しとっちめた。
同時に、ケーブルニュース局で最高の視聴者数がいる保守系FOXニュースは、番組で招いたコメンテーターが「弾劾の根拠はない」と語るのを繰り返し流した。
どこかで見たようなレトリックだ。「桜を見る会」問題をめぐり、名簿などの証拠を隠滅したり、曖昧な発言で事実を曲げたりしようとしている安倍政権を思わせる。
米メディアによると、下院本会議は12月16日の週にも開かれ、この決議案で、トランプ氏の弾劾訴追を可決する見通し。その後、上院が来年1月、弾劾裁判を開始する。しかし、上院は与党・共和党が多数派で、トランプ氏を有罪とする3分の2の賛成多数を得るには共和党議員20人の造反が必要とされるため、有罪罷免は難しいとされる。
「安全保障と国民の利益を守る」ことを盾に、大統領の「罪」を追及する民主党。政権の嘘と証拠隠しに対する果敢な姿勢と戦略は、日本も学ぶところがある。(ジャーナリスト・津山恵子)
※AERA 2019年12月23日号