日米の首脳や与党が、同じような「レトリック」を使っている。政権のスキャンダル追及をかわす点で通底するが、日本が学ぶべき戦略もある。AERA 2019年12月23日号で掲載された記事を紹介する。
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米国史上4回目となる弾劾手続きが進められている。
トランプ米大統領のウクライナを巡るスキャンダルについて弾劾調査を進めてきた連邦下院の民主党は12月10日、トランプ氏に対して二つの弾劾条項を含む決議案を下院本会議に提出すると発表した。弾劾条項、つまり大統領が犯した罪は、(1)度重なる大統領権限の乱用、(2)議会の妨害の2件だと、民主党は断定した。
弾劾調査のきっかけは、「ウクライナ疑惑」だ。
■「全てが偽り」と反論
今年7月25日、トランプ氏とウクライナのゼレンスキー大統領が電話会談を行った際、トランプ氏が、バイデン前副大統領と彼の息子のウクライナ企業との関係について「調査」を依頼した。トランプ氏は、2020年大統領選挙で再選を狙っており、バイデン氏は、最有力民主党候補だ。電話会談に先立ち、ウクライナが喉から手が出るほど求めていた軍事支援を保留にもしていた。
「トランプ氏は、再選のため、自分の利益を国と国民よりも優先した」(ナドラー下院司法委員長)というのが、弾劾条項の「権限の乱用」に当たる。トランプ氏が大統領選に勝利するという個人的利益のために外国の介入さえいとわず、国益を損なったとしている。
ところが、下院民主党による弾劾条項の発表直後、共和党の重鎮であるグレアム上院司法委員長は「全てが偽りだ」と反論。権限を乱用しているのは「大統領ではなく民主党だ」と主張した。
トランプ氏も翌11日朝、「大統領による不正の証拠はない」「今回の弾劾は、不公平で前代未聞のものだ」などという共和党議員らのツイートを60回以上もリツイートした。トランプ選挙陣営は、多くの生命体を消滅させる米映画の悪役にトランプ氏の顔を貼り付けたコラージュ動画をつくり、先のナドラー氏らを消し去る映像をツイッターで流すなど、“話題作り”でも物議を醸している。