AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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取材場所に、ウィル・ベチャー監督は「ひつじのショーン」をはじめとするキャラクターのクレイモデルとともに現れた。
「表情によって目の大きさが違うんだ。じつは耳にはグリッターも入っていてね」
まるで我が子を紹介するかのように、一体一体について丁寧に言葉を重ねる。どれも「映画 ひつじのショーン UFOフィーバー!」の撮影で実際に使用されたものだ。
「ひつじのショーン」は、クレイアニメーション業界を牽引するアードマン・アニメーションズによる「ウォレスとグルミット」から誕生したキャラクター。テレビシリーズとしてスタートし、この映画は劇場用長編2作目だ。テレビアニメ同様、台詞はない。
「最も大きな挑戦は、どうすれば1時間以上もの間、観客の心をつかみ続けることができるか、ということ。初めてショーンの映画を観る方でも楽しめて、世界観を広げることができる物語を、と考えました」
そうして生まれたテーマは「SF」だ。ある日、ひつじのショーンの前に、不思議な力を持つ宇宙人ルーラが現れる。どうやらUFOに乗ってやってきたらしい。ショーンとルーラが心を通わせていくシーンには期待と喜びがあふれ、観ていて素直に心が動く。
制作期間は4年。その多くは、コマ撮り撮影に費やされているものだと思っていた。けれど、ベチャー監督が強調していたのは「僕たちは脚本をつくる時間をとても大切にしている」ということだった。
「ルーラはショーンに話しかけるとき、どんな気持ちかな? こうしたことは本当に起こるかな?といったことをとことん話し合いました」
ルーラという存在についても、共同監督や脚本家、プロデューサーと話し合いを重ねた。
「“違う場所からやってきた人”とどのように接してきたか。僕たちそれぞれの経験を披露しあったんだ。『交換留学生みたいな感じかな』なんて言いながら。僕には、8歳と12歳の二人の娘がいるので、彼女たちを見ていて感じたことも、反映されているよ」