高額な補助金を出してまで自治体が移住者を呼び込む理由を、地方移住を支援するNPO法人「ふるさと回帰支援センター」(東京都千代田区)副事務局長の嵩和雄(かさみかずお)さんはこう話す。
「一言でいえば、人口減少対策。とくに2014年に消滅の可能性がある自治体が全国に896あると報じられて以降、多くの自治体が人口減を“自分事”としてとらえるようになった」
冒頭で紹介した丸山さんが移住した松川村も、全国の例に漏れず人口減少が進む。松本市のベッドタウンとして一時は人口が1万人を超えたが、自然減により15年の国勢調査で1万人を割り9948人となった。
17年4月、村は総務課に新たな係を新設した。名付けて「1万人復活特命係」。1千万円の予算を計上し、本格的な移住・定住対策に乗り出した。「特命係」の畠山正英係長は言う。
「村の行政サービスを維持するには、人口1万人が最適。再び人口を1万人に戻したい」
打ち出したのが、補助金で移住者を増やす制度だ。45歳以下を対象に村外からの移住世帯で新築を建てると100万円、中古住宅購入で50万円の補助金を支給する。
こうして今年11月末までに、村外からの移住者で新築を建てたのは14世帯45人、同じく中古住宅を購入したのは9世帯30人。いま村の人口は9680人(11月1日現在)と1万人には達していないが、先の畠山係長は手ごたえを感じていると言う。
「家を購入する方だけではなく、不動産業者や建築会社などにも制度の認知度が上がっている。有効な制度だと感じています」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2019年12月16日号
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