すると親は、単に「使っちゃダメ」と言ってしまいがちだ。だが、これが正しい答えかといえば、そうとも言い切れない。ダメと言ったことで親は安心してしまい、子どもが何をしているのか把握しようとしなくなることもある。一方、ダメと言われた子どもたちは、親が見えない陰での利用に向かいかねない。
だからこそ、子どもたちの間で何が流行(はや)っているのかを知ることが大切だと、ITジャーナリストの高橋暁子さんは言う。
「何をどんなふうに使っているのかを理解し、リスクを伝えることは必要不可欠です。たとえば動画投稿サービスで気軽に顔を出すのは危険ですし、制服などが写り込んだ写真を載せれば学校の特定にもつながります」
注意すべきはSNSだけではない。遠方に住むプレーヤーと遊ぶことができるオンラインゲームにも、危険な出会いはある。
「最近のゲームアプリはボイスチャット機能がついていることが多く、子どもたちに大人気です。遠くにいても声で身近に感じやすく、心理的距離も近づきます。話をするうちに、つい小学校名を教えてしまったという相談を受けたこともあります」
そう高橋さんは言い、注意したい点をこう挙げる。
「見落としやすいのは、ゲーム機を使っている子どもたちです。低年齢の可能性が高く、だましやすい。幼児性愛者がゲーム機からアクセスするユーザーを狙って声をかけていたという話もあり、相当ひどい状況です」
携帯電話事業者やゲーム機の販売会社も対策を講じている。ペアレンタルコントロールやフィルタリング機能を搭載して機能制限をしたり、注意喚起を独自に行ったりもしている。だが、過剰なフィルタリングは逆効果になることもある。若い女性の悩みの相談や支援をするNPO法人「BONDプロジェクト」代表の橘ジュンさん(48)は、こう指摘する。
「トラブルに巻き込まれたときも、『ダメだと言われたことをやってしまった』と周囲に相談できなくなってしまう。リテラシー教育は大切ですが、親や先生に話しづらいことがあったときに駆け込める相談先も伝えてあげてほしい」
SNSでもリアルでも、居場所を探す子どもたちを救うのは、寄り添う気持ちを持つ大人たちだ。(編集部・福井しほ)
※AERA 2019年12月9日号より抜粋