製造業と比べコストがかからないデジタルプラットフォーマーは事業拡大が容易で、グーグルやアマゾンといった市場支配力が極めて強い事業者が相対的に出現しやすい。デジタル分野で自由で公正な市場環境を整備することは重要だ。検索サービスやSNSサービスは、消費者に無料でサービスが提供されるが、その代わりにプラットフォーマーは消費者の行動情報などを収集することができる。それを投入財にしてターゲット広告というビジネスモデルが確立されている。
杉本委員長はこう語る。
「検索サービスが無料だったとしても消費者との間で取引関係が成立すると考えられるので、それに対して独占禁止法を適用していく必要があるのではないか。今までの取引で主な着目点は価格だったが、情報の着目点は質になってくる。消費者が得る情報の質も問題にすべきではないか」
消費者が、信頼性に欠ける情報や有害な情報を自分の情報と引き換えに入手することは、対等な対価になっておらず、消費者の利益を害されることになるということだ。
「誤情報や有害情報が流れているサイトと、きちんと取材した信頼性の高い情報を流しているサイトとの間では、公正な競争ができる環境にはなっていないかもしれない。メディア間の対等な競争環境をどう確保していくか、メディアの方々にも考えていただきたいと思います」(杉本委員長)
(編集部・小柳暁子)
※AERA 2019年12月2日号